DIARY

【地域から嫌われていた養鶏場から学ぶ地域課題へのチャレンジ】

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地域から嫌われていた養鶏場から学ぶ
地域課題へのチャレンジ
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先週のメルマガでは、地域一番園を目指す上で
重要な視点について解説させていただきました。

地域に寄り添い、地域課題にチャレンジしていく点において、
ヒントとなる事例を、今回ご紹介させていただきます。

相模原市南区には、歩いていけるほどの距離に
7つもの養鶏場が集中する「たまご街道」と言われる一画があります。

どの駅からもやや距離のある地域でありながら、
週末を中心に、多くの人が卵のみならず
卵を使ったスイーツや料理を求めて足を運ぶ場所です。

中でも、「有限会社小川フェニックス」は
卵の直売所兼カフェである「Sweet Eggs」を運営しており、
濃厚なコクと甘みが特徴である鳳凰卵を使った
様々な料理やスイーツを味わうことができる人気店です。


(Sweet Eggs公式HPより)

採れたての卵を使った卵かけご飯が楽しめたり、
焼き時間に合わせて整理券が配布される
個数制限のある人気シュークリームを味わえたりする場として、
今やメディアにも取り上げられる相模原市の観光名所となっています。


(Sweet Eggs公式HPより)

この直売所兼カフェをオープンした背景には、
地域住民とは敵対せずに
共生を模索するストーリーがありました。

この地で養鶏が始まった当時は民家が少なかった地域でしたが、
宅地化が急速に進むに連れて、周囲から養鶏場の臭いや
虫の発生について厳しい声が出るようになったそうです。

実際に、私はこの地域の中学校に通っていましたが、
窓が開けられないほどの臭いが日々漂っていたことを覚えています。

養鶏場の小川フェニックスは、
できるだけ周囲に迷惑をかけない環境作りとして、
鶏に与える餌を消化吸収の良い発酵飼料に変えて排泄物を臭わなくしたり、
養鶏場への理解を深めてもらうために
地域との接点を作って卵を食べてもらう機会を設けたりしました。

さらに、2013年には養鶏場が連携して
「たまご街道」というのぼりを立てることにしました。
事業者がまとまったことで認知度は大きくアップし、
その後に卵直売所やカフェを設置した影響もあり
近隣の人だけでなく、市外の人の来訪も増えることに繋がりました。

今もなお、各養鶏場による努力や工夫がされており、
直売所にあるハンバーガー屋では、この地に恩返しをしたいという思いから
学生向けに通常料金の半額の「出世払い価格」を設定したり、
近隣の小学校と連携して
児童がレシピ考案した卵料理をカフェで販売するなど、
地域から応援され続ける様々な取り組みが行われています。

そこには、将来的に養鶏場の事業に関わる
若者を発掘していくことも、
意図として隠されているのではないかと思います。

地域に寄り添い、地域の課題にチャレンジし続ける
養鶏場の経営努力が窺えます。

地域課題に目を向けていくことは
就学前教育保育施設でも重要な視点です。

例えば、採用の対象となる学生が少ないという課題を持った地域であれば、
地域への移住者を獲得するために、
学生が地域の魅力を体感できる機会を設けて
就職意欲を育むアプローチが考えられます。

京都府丹後地域で21つの福祉施設
(児童福祉事業・障害福祉事業・高齢者福祉事業)を展開している
社会福祉法人みねやま福祉会は、
毎年採用倍率1.5倍~2.0倍の就職希望者を募っており
そのうち半数以上が他エリアからの移住者です。

介護職の有効求人倍率は3.63倍(※)であり、
保育士の有効求人倍率3.54倍を上回る人材採用が難しい業界でありながら、
「住まいを変えても就職したい」という熱意を引き出す採用を実現しています。
(※ 厚生労働白書 全国有効求人倍率データより)

社会福祉法人みねやま福祉会は、移住者を確保するために
京丹後地区の魅力を体験できるインターンを企画し、
学生が京丹後地区の良さを体感できる場を設けています。

地域課題を経営に繋げていく視点を取り入れて、
地域とのご縁を育んでいくことに
チャレンジしていただければと思います。

2月よりスタートする「地域一番園実現勉強会」では、
社会福祉法人みねやま福祉会の常務理事 櫛田啓氏を
ゲストの一人としてお呼びいたします。
前述した移住者を獲得する取り組みについても
より詳しく知ることができますので、この機会にどうぞご検討ください。