DIARY

【両利きの経営 二兎を追う戦略の重要性】

<本文のポイント>
1.1歳児、2歳児の保育利用率が2015年以降急増している
2.自園の方向性について「問い」を作ることが重要である
3.施設型給付であったとしても一定の園児数の安定化は経営する上で重要である
4.複雑な経営環境だからこそ「探索」と「深化」の両利きの経営が重要である
 
 
2022年9月6日のメルマガで
保育所の利用率や利用者数について
お伝えさせていただきました。
 
その中で、特に注目されることが、
1歳児、2歳児の保育利用率の増加です。
 
子ども子育て支援新制度が始まった2015年時点では、
1歳児、2歳児の保育利用率は38.1%でしたが、
最新の1歳児、2歳児の保育利用率は56%まで増加しています。
 
その一方で2015年時点での出生数は約100万人でしたが、
2021年の出生数は約81万人となっています。
 
1歳児、2歳児の保育利用率が上がり、
出生数は減少していますので、
3歳児での幼稚園入園が大きく減少しています。
 
実際に今年の園児募集がまもなく出揃いますが、
3年保育の入園者数が昨年度対比で50%になっている園もあります。
 
一方で満3歳児での入園が増加していますので、
合計すると例年通りという結果になっている園も多くあります。
 
 
 
このような情勢の中で園児募集について
さまざまな考え方、方向性があります。
 
自園の方向性について「問い」を持つことによって、
改めてこれからを考えるきっかけとなります。
 
例えば
・そもそも私たちはなぜ園児を集めるのか
・自園の最適な園児規模はどのくらいなのか
・自園にご家庭が求めているものは何か
・なぜ3年保育の入園者数が減少しているのか
・どうしたら3年保育の入園者数を安定化させることができるのか
どうしたらより多くのご家庭に自園の教育を届けることができるの
などです。
 
 
 
施設型給付に移行することで、
園児数に関わらず経営ができるようになってきている
というお話をたくさんお伺いします。
 
しかし、その内容を資金収支計算書や
事業活動収支計算書をもとに確認していくと、
やはり園児数が安定している園の方が、経営は安定しています。
 
例えば処遇改善は園児数が関わってくるものがあるため、
園児数が少ない園のほうが職員の給与を上げることは難しくなります。
 
結局園児数が減少していくと、
職員数をその分減らすか、処遇改善として改善していた金額を、
その他の収入から配分していく必要に迫られます。
 
 
当然のことなのですが、収支差額をしっかりと残し、
働いている職員の給与を安定化し、職員満足度を上げていくためには、
ある程度の園児数は必要になるのです。
 
 
そのように考えますと、施設型給付に移行をしたとしても、
やはり園児数の安定化は一つの重要な課題です。
 
 
2020年度のビジネス書大賞の特別賞を受賞した
「両利きの経営 ~二兎を追う戦略が未来を切り開く~」
という書籍があります。
 
この本には「探索」と「深化」の両利きの経営が重要であり、
どちらも大事にすることによって、企業は発展し、
成長していくという事例が書かれています。
 
 
探索とは「自分たちの認知を超えて、その認知を拡大していこうとする行為」、
深化とは「探索を通して試したものの中から、成功しそうなものを見極め、
それを深堀していく活動」のことを言います。
 
 
少子化、共働き世帯の増加による
「対象人口の減少」と、「入園年齢の低下」は
幼稚園にとってとても大きな課題です。
 
 
2015年以前と2015年以降とでは、
数字から見ても明らかに経営環境は変わっています。
 
 
価値観が多様化し、マーケティングも複雑化しています。
これをやっていれば園児が集まる、
これをやっていれば採用ができる、
というものはかなり見えづらくなっています。
 
 
だからこそ、教育を深化させていくことや、
今まで大切にしてきているものを
さらに高めていくことは必要不可欠です。
 
しかし、それと同時に探索がとても重要なのではないでしょうか。
 
例えば幼稚園にとっては共働き世帯への幼児教育の提案も、
乳児に対しての保育も探索が必要です。
 
共働き世帯や乳児を受け入れていくいかないにかかわらず、
「自分たちの認知を超えて、その認知を拡大していこうとする行為」
必要であると思います。
 
 
探索したうえで、自園にとっての「問い」を作り、
その問いに対して深化をしていくことが重要です。
 
 
複雑な経営環境だからこそ、
両利きの経営を参考に、二兎を追う戦略で
未来を切り開く必要があるように感じます。