DIARY

【 名将 川嶋伸次に学ぶ 】

走った距離は裏切らない! 】Posted by Shidara

 

仕事とは時に「長距離走」に喩えられることがあります。
幼稚園における人材育成も
長距離選手とそのコーチ・監督の関係と
共通する点が実に多いのも事実です。

そういった意味で、
GCLIPでは本メルマガにおいて箱根駅伝を題材に、
園経営のヒントをお届けさせていただくことがあります。

2021年も年始第一弾として箱根駅伝を題材に
メルマガを発信させていただきました。

2021年1月5日号バックナンバー↓↓↓
https://www.gclip.net/diary/998/

さて、今回は2009年東洋大学初優勝の躍進に貢献し、
部員の不祥事によって、出走直前で引責辞任をした、
川嶋伸次元監督(シドニーオリンピック男子マラソン代表)の
育成哲学に触れながら4月の新人の受け入れ体制について、
まとめてみましたので、少しでもヒントとなれば幸いです。

まず人材を適切に導くためのコーチングスキルは
大別して次の3つのカテゴリに分かれるといいます。

(1)スカウティング
 →リクルート活動であり、自園に適合する人材を獲得する段階
(2)育成
 →自園の経営哲学に馴染ませながら成果を出す段階
(3)強化
 →自園の“顔”となって活躍することで募集や採用に好影響を与える段階

最も難しく大切なのは、(1)スカウティングです。
特に幼稚園業界は少なくともここ5年は完全なる売り手市場ですから、
納得のいく学生を採用できている事業所のほうが少ないです。

また、川嶋氏によると、スカウトした人材は、
どうしても贔屓目で見てしまい、甘やかしてしまう傾向があり、
「惚れた相手」を育成することの難しさがあるといいます。
理由はシンプルで、
自分が欲しい人材は、競合校のスカウトも目をつけているため、
どうしてもいい条件を出して”選んでもらう”という感覚に陥りがちになり、
入学後もその延長として接するので結果として”甘やかしてしまう”ことに
つながる傾向があるからだといいます。

同じような経験を幼稚園の採用活動で経験したという
理事長、園長先生も少なくないと思います。

つまり、スカウトはするけど、立ち位置としては、
その他の職員と同じところからスタートし、
特別に条件を付与することなく凛として、
毅然と(2)育成に取り組めなければならないということです。
そうしないと、スカウト自体は成功しても、
そのスカウトは自園にとっていい人材の輩出には
つながらなくなってしまう
のです。

逆に言うと、(1)でフラットな状態をつくれれば、
(2)はある程度うまくいきます。

(2)育成において最も難しいのは、
個人の特性を適切に把握することにあります。
叱られて伸びるタイプか、褒められて伸びるタイプなのか?
結論から言えば、誰もが両方必要なのですが、
叱るにしても、褒めるにしても、
タイミングと、シチュエーションが最も大事だということです。

これは、「こうしたらうまくいく!」という
黄金律のようなものは存在しないため、
一つの原則をこちらではお伝えすることにします。

褒める=人前で
叱 る=個別で

という原則に則ることが大切だといわれます。
勿論この原則でさえも、状況判断で時に逆転することも必要でしょう。

故に、コーチングの立場にある方が一人ひとりをよく観察し、
適宜適切に判断する必要があるのです。

(2)育成に関して、川嶋氏は実に興味深い哲学を解いています。
今では文武両道は箱根のランナーにとっては当たり前のように
語られる風潮はありますが、
川嶋氏は「箱根出場」は目的ではなく、手段であるといいます。
つまり、ランナーとしてはその先の競技生活を通して、
あるいは人間として豊かな人生そのものを送るために、
何が必要か?という点を非常に大事にし、選手に説いていたといいます。

選手生命として競争力を持てるのは長くても30代前半までで、
そのあとは、一社会人として、人間として人生を豊かに生きることを
誰もが望むはずです。そのために、豊かに生きる上で必要な
知恵と知識をきちんと習得し続ける能力が必要だし、
選手として引退した後に活躍できるフィールドがきちんと用意され
環境に身を置くことはとても重要なことだというのです。

これは本当に大切なことです。

幼稚園教諭や保育士は社会問題になるほど人手不足です。
ですから、60代で幼稚園教諭や保育士として採用されるケースも珍しくはありません。
時に子どもと園庭を駆け回り、
時に20kg近い子供を抱いたり、おぶったりして、
活動的な子どもたちの楽しい歓声を盛り上げるための立役者となるのが、
先生や保育士の役割になることだってあるでしょう。

実際に50代、60代で現場の第一線で活躍する先生もいらっしゃると思いますが
やはり、管理職となり後輩の指導的立場、
あるいは、園を総括していく立場になる方が圧倒的に多く、
それらのポジションがそう多くないことも一つの課題となり得ると思います。

それ以外の多くの先生方は途中で退職し、
活躍の場として自園以外の違う道を模索することになるでしょう。
だからこそ、やめ方は大事なのです。

就業者数が極端に少ない売り手市場であるがために、
相手に遠慮してしまい、
「自園での働き方」やこの大切な「やめ方」の指導が十分にできず、
結果として採用、育成、強化の手順が踏めずにいる園が多くあります。

育成の最初の段階で重要なのは、
「私たちの仕事はとても素晴らしい仕事だ!」と伝えている方は多いと思います。
が、追加条件が必要であることを見落としている場合も少なくありません。

では、追加条件とは何か?
これが、「努力」と「感謝」なのです。

努力とは、
「私たちの仕事はとても素晴らしい仕事だ!」

プラス、

誰の目の前にも必ず訪れる壁を乗り越え先生になった人にとっては
とか、
「子どものために成長する努力を背中で伝えられた人にとっては」
など、

自助努力があって初めて誰かに喜んでもらえる自分を認識できるから、
この仕事は素晴らしいんだ!というところまで導けた場合、
自他ともに認めるいい働きをして、仮にやめるとなった場合も、
惜しまれながら、応援されながら次のステージに上がっていく
人材になっていくことが可能となります。

では、感謝とは何か?

これがなかなか難しいのです。
特に経営者が従業員に伝えるのは至難の業です。
例えば、
保険や年金は学校法人の場合は共済組合への掛け金で賄われます。
この仕組みは、労使折半ですので、給与明細の控除欄に、
「市民税」「共済長期掛金」 「共済短期掛金」などがありますが、
この掛金の部分は実は、給与所得者(被雇用者)と給与支払者(雇用者)が
折半で支払っているので、感謝されるべきとても有難い制度です。

が、ここの説明がないので、
この制度自体が有難いどころか、当たり前になってしまうばかりではなく、
「なぜ、こんなに差し引かれてるんだろう!」と不満にさえなってしまう
ケースが少なくない
のです。

実際に、やめ方が正しくなかったがために、
フリーターなど非雇用状態で国民年金保険のみの支払いをした場合
年金受給者になってから受け取る金額は、同等の年収ならば、
およそ1/3程度まで減額されてしまうという、莫大なデメリットもあります。

体力や気力も十分にある若い人にとっては
それほどリアリティの伴わないない話かもしれませんが、
人生100年時代といわれる今この手の話は、
社労士さんなどに依頼してでも、
きちんと体系立てて理解してもらう必要があるのです。

そして、保険料の労使折半のありがたみや、
その他、法人に所属するメリット、ありがたみは山ほどあります。

このあたりを、まだ頭の柔らかい就職の入口で理解してもらい、
これから社会人として日々の成長の土台においてほしいものです。

川嶋氏は、陸上は野球やサッカーと違い、
「走った距離は裏切らない!」といいます。

シュートや素振りの練習を人一倍やったとしても、
それが必ず成果に結びつくかと問われれば、
成果に結びつくとはいいがたいが、
マラソンは走った距離がそのまま成果として現れるというのです。
(もちろん、野球やサッカーも人一倍練習した人は、
 成果に結びつく確率を高めるという意味では成果があるはずです。

では、愚直に練習に励める環境を整えるのは、
受け入れ側(監督やコーチ)による、
マインドセットによるところが大きく関係してくるのです。

「私たちの仕事は素晴らしい!」

こう胸を張って言うためにも、
「努力」と「感謝」の大切さを同時に伝えていきましょう。

経営における人材育成においては、
時に相手にやさしく寄り添い、
時に相手を厳しく突き放し、
時に相手に如何に恵まれた環境にいるか、
を、理解してもらわないと
いけない…

豊かな時代だからこそ、
改めて、人として豊かに生きるための知恵と知識を
身に着けてほしい
と思います。

「走った距離は裏切らない!」

地に足つけたそんな充実感をもって先生としてイキイキと
力強く人生を歩む人材育成に是非チャレンジしてください!

ということで、最後に少しだけ宣伝を。
園経営者の皆様に代わって、3月24日(水)13:00~
AP市谷とOnlineにて、「努力」と「感謝」の重要性を
新人・若手から中堅の先生方向けに伝えるセミナーを
開催しますので、よろしければご参加ください。

詳しくは下記リンクよりご確認ください!
https://www.gclip.net/seminar/1061/