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ハラスメント回避と理念浸透が共存する「だいすきBOOK」
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〈本文のポイント〉
・現代のパワハラの種類と新人指導に与える影響
・理念浸透のポイントは「気持ちよく次の行動に移ることができる表現」に翻訳すること
・偉人の言葉を現代風に翻訳した書籍「Ichigo Keywordsシリーズ」
・理念共有ツール「だいすきBOOK」の特徴3選
〈本文〉
新学期を迎え、新たな先生が園に
仲間入りを果たしたころかと存じます。
社会人として、先生として、新人の先生に
教えなければならないことは多岐にわたりますが、
新人の先生に指導をするうえで気になるのが“ハラスメント”です。
ハラスメントには “パワハラ”の他、
無神経な言動や嫌がらせなどで、
相手に精神的な苦痛を与える“モラハラ”、
性的な言動や容姿・体型への指摘で、
相手を不快にさせる“セクハラ”、
「男性だから〜」「女性だから〜」といった
性別役割分担意識に基づく差別や嫌がらせをする
“ジェンダーハラスメント”などがあります。
2024年にはメッセージでのやり取りの際に
「承知いたしました。」「お願いいたします。」など、
文末に「。(句点)」があることに威圧感を覚えるという
「マルハラ」が流行語大賞にノミネートされました。
最近では、配慮のつもりでした言動が、
逆に相手の成長機会や働きがいを奪ってしまう
“ホワイトハラスメント”という言葉も耳にするになりました。
例えば、「仕事が終わっていないのに、
残業は厳禁だから早く帰ってと退社を促される」などが挙げられます。
何がハラスメントに該当するか分からない現代ですが、
指導をしない訳にもいかないと、
“共有の仕方”を悩まれている方も
いらっしゃるのではないでしょうか?
特に、園が求める業務のレベルや、習慣は、
暗黙の了解になっていることも多く共有することが
難しいと、感じられます。
しかしこのような問題は、経営者の想いや理念を
目に見える形にして共有し、
園内に浸透させることで解決に向かいます。
重要なのは、理念を“伝える”ではなく、
“浸透させる”という視点です。
“伝える”だけでは、それぞれの解釈をしてしまい、
仕事に対する姿勢や考え方を共有することにはつながらないからです。
では、解釈を合わせて理念を“浸透させる”には
どのようなことを意識すればよいのでしょうか?
ポイントは、
「気持ちよく次の行動に移ることができる表現」に翻訳し、
理解をしやすくするための橋渡しをすることです。
ここで一つ、参考になる事例があります。
【事例1】偉人の言葉を現代風に翻訳した書籍「Ichigo Keywordsシリーズ」
これは、サンリオキャラクターズと
朝日文庫がコラボして出版した書籍です。
サンリオキャラクターとともに、偉人の教えを
現代の言葉や具体的な場面に置き換えて解説しています。
私も、ハンギョドンのイラストと
中国の哲学者「老子」の教えを掲載した
「ハンギョドンの『老子』」を購入し、読んでみました。
■こちらで試し読みができます(ハンギョドンの『老子』)
https://publications-asahi.sv.bookbrowsing.jp/sv/open/rt1KEYWCUkDK
2,500年も前の中国で活躍していた老子の言葉は、
本来であれば少し距離を感じるような言葉です。
しかしこの書籍では、
インターネットやメディアからあふれる情報の渦に
飲み込まれてしまうことや、
SNSに投稿されている誰かの生活を
羨ましく思ってしまうことなど、
現代人にも想像がしやすい具体的な例をあげています。
例えば、
「人に勝つ者は力有り、自ずから勝つ者は強し。」
という老子の言葉は、
「人に勝つよりも、自分に勝つ方が難しい。」
と、表現しなおされています。
また、以下のような説明文も添えられていました。
「競争社会の中で生きていると、
人に勝つことばかり考えるようになってしまう。
でもね、本当は自分に勝つことが大事。自分の人生は結局、
自分次第だから。」
老子の教えが、
「気持ちよく次の行動に移ることができる表現」に翻訳されることで、
自然と理解できるものになります。
実際、この商品に関するAmazonの口コミをみると
以下のようなコメントがありました。
「普段あまり本を読みませんが、ハンギョドンのイラストが可愛かったので購入しました。
初めて老子の言葉に触れ、普通のことだと言われればそうかもしれませんが、
改めて穏やかに生きるための術を教えられたように感じました。」
「難しい言葉も子どもでも分かるようにかみ砕いて説明されていて、
老子に初めて触れる人にも読みやすい一冊です。」
どれだけ大切な考えであっても、
伝わらなければ意味がありません。
この翻訳のひと手間が、理念を“浸透させる”ポイントとなります。
この考え方を実際の園運営に落とし込んだ事例が、
東京都内のある園で行われた取り組みです。
【事例2】仲間と、職場と、仕事が好きになる理念共有ツール「だいすきBOOK」
都内で幼稚園、認定こども園、
企業主導型保育施設、児童発達支援施設、
学童といった五つの異なる事業を展開する
石川キンダー学園さまでは、
各施設で働く職員の価値基準を合わせて
理念を共有するための
クレドブックを作成しました。
その本のタイトルは「だいすきBOOK」。
「仲間が好き、職場が好き、仕事が好きという
職員の気持ちを引き出す本にしたい」という、
制作陣の先生方の想いが込められたタイトルです。
故にこの本は、単なる理念集ではありません。
理念を理解する前に、
「この場所で働くことのできる幸せ」や
「この先生と働けることの喜び」を
感覚的に受け取れる表現の工夫と、
読み進めたくなる構成がなされています。
その上で、園独自のルールや考え方を
伝わりやすい言葉でシンプルにまとめているため、
理念の押し付けにならず、職員の心に届けることができるのです。
「だいすきBOOK」の主な特徴の詳細をご紹介いたします。
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〈だいすきBOOKの特徴3選〉
1.プライベートな話もしやすくなる「だいすきアンケート」
2.ドラマチックな年表
3.否定や強制をしない、提案型ルール集
1.プライベートな話もしやすくなる「だいすきアンケート」
「仲間を好きになるためには、まず仲間を知らなければならない」と、
事前に実施した全職員向けのアンケート結果をまとめています。
「出身地」や「趣味」、「学生時代に所属していた部活」などの回答結果が
ランキング、割合等で示されています。
中には「初デートで行くならどこ?」という質問もあり、
職員同士の会話が広がる“きっかけ”になりやすい問が用意されています。
ビジュアル的にわかりやすいものを書籍冒頭に掲載することも、
「だいすきBOOK」への抵抗感を和らげる構成のポイントです。
2.ドラマチックな年表
多くの園がHP等に掲載している沿革にあるように、
園や法人には積み上げてきた歴史があります。
新人の先生たちが、その歩みを経験することはできません。
しかし追体験することによって、「なぜ現在の姿になったのか」を知ることはできます。
そのためのポイントは歴史をドラマチックに示すことです。
「だいすきBOOK」の年表では、
興味を引く見出しと短い文章で出来事を記しています。
当時の先生の喜びや戸惑いの感情を赤裸々に綴り、
法人が変化してきた理由、「なぜ」の部分を解説することで
追体験しやすい構成となっています。
3.否定や強制をしない、提案型ルール集
「だいすきBOOK」には、石川キンダー学園の先生として
もっていてほしい仕事に対する姿勢や、
守ってほしいルールをまとめたページもあります。
「この場面ではどう判断するべきか」という問いに対するヒントが、
具体的に示されています。

(仕事に対する姿勢や、SNS使用上のルールをまとめている「だいすきBOOK」内のページ)
しかし、そのルールを紹介する文章には
「~しないでください(否定)」「~してください(強制)」
という文末表現は使われていません。
その代わりに使われているのが、
「私たちは~しています!」「~してみませんか?」
という提案型の文末表現です。
この表現はいわば、
パワハラに該当しない、上手く伝える表現方法です。
新人指導をする先生へのヒントにもなります。
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仲間が増えるタイミングは、
組織が変わるタイミングでもあります。
だからこそ、理念を改めて見つめ直し、
「どう共有するか」を考えることが重要です。
新しい一年のスタートに、
理念を“浸透させる仕組み”について、
見直してみてはいかがでしょうか。
