DIARY

超早期離職を確実に回避する情報の解像度を上げる発信

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超早期離職を確実に回避する
情報の解像度を上げる発信
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<本文のポイント>
・ 4時間退職から読み取れる若者心理
・ 若者にとって“分からない不安”が、選択しないという判断になる
・ まずは、自園における働き方の「具体化」をする
・ “ありのままの情報”を出しづらい場合は、改善に向けた取り組みを示す
・ 園に対する理解度を高める発信ポイント3選

新年度が始まると同時に、
入社初日にもかかわらず退職代行を利用した、
「4時間退職」の報道がありました。

このような驚くべき超早期離職の現象に触れると、
「最近の若者は我慢ができないのではないか」と感じてしまうのも無理はありません。
実際に、若者の価値観の変化に加え、
転職が身近になっていることや退職のハードルが下がっていること、
SNSなどにより情報が簡単に手に入るようになったことなど、
以前よりも“我慢して続ける”という選択をしにくくなっている側面は、否定できません。

一方で、それを個人の問題として片付けるのではなく、
園として採用活動をする上で、適切に対策していくことが重要です。

新卒に対して、「以前よりも、早く辞めているのではないか」
という実感を持たれている方も多いのではないでしょうか。

実際、退職代行サービスの利用動向を見ると、新卒の利用が増加傾向にあり、
さらに従来は5月(GW明け)に多かった利用が
近年では4月にピークが前倒しされる傾向も見られており、
辞めるまでの“スピード”が早まっている可能性は十分に考えられます。

これまでの離職は、入職後に違和感が徐々に蓄積し、
半年~1年、あるいはそれ以上の時間をかけて判断されるのが一般的でした。
しかし現在は、入職前の段階で違和感を持ったり
あるいは入職直後に「なにか違う」と感じたりしたら、
たった数日で離職に至るケースも見られます。

転職口コミサイト「転職会議」を運営する株式会社リブセンスの調査では、
早期離職経験者の4人に3人(約74%)が
「入社前にリスクを予知できていれば退職は防げたと思う」と回答しています。
早期離職の多くが、入職後に発生した問題ではなく
就職活動の段階で、
十分に理解していなかったことによって起きているということです。

では、なぜこのようなズレが生まれるのでしょうか?
ポイントとして、Z世代の心理的特徴を解説いたします。

Z世代は、経済環境の変化、雇用の不安定化、キャリアパスの多様化など、
将来の見通しを立てにくい、正解のない社会の中で育ったため、
「こうすれば安定する」「この道を選べば間違いない」といった
明確な判断軸を持たないまま、意思決定を重ねてきています。

その結果として「自分で判断し続ける力」や
「常に不確実性を前提に考える姿勢」が身につきやすくなりました。

Z世代である若者は、目の前の選択をする際にも、
無意識のうちに、「この先本当に大丈夫か」と不安視します。
そして、少しでも不確実な要素があると、
それ自体を「大きな不安」として捉えやすいのです。

ここで重要なのは、
その不安の多くが、現実で起きた実際の問題ではなく、
“分からないこと”から生まれているという点です。

これは、採用活動における情報発信にも、影響するポイントです。

例えば、残業が多いor少ないという事実そのものよりも、
残業がどの程度なのか分からない状態の方が、強い不安を生みます。
また、人間関係が良いかどうかという情報よりも、
どのような距離感なのか分からないという、曖昧さの方がリスクとして受け取られます。

分からないものに対しては判断がつかないため、
「選ばない」という行動を取ることに繋がるのです。
Z世代はこの傾向が特に強く、「少し先の不安」に対して非常に敏感です。
だからこそ、不確実な状態のまま進むよりも、
一度立ち止まる、あるいは別の選択肢に移るという行動を選びます。
この行動傾向の結果が、就職直前の辞退や、就職直後の離職といえます。

こうした背景を踏まえると、
早期離職を防ぐために採用活動において重要なのは、
就職後をくっきりイメージできるような具体的な情報発信をすることです。

ただし現実には、「そもそも自園の情報が言語化できていない」
という課題を抱えているケースも少なくありません。

その場合は、現場の実態を把握することから始めましょう。
職員へのヒアリングなどを通じて、日々の業務の流れや
負担のかかる場面を把握することが、簡単な方法になります。

例えば、「どの時間帯が忙しいのか」「残業はどのような時に発生するのか」
といった点を職員と整理していくことで、園の実態が見えてきます。

また、自園の改善が必要な内容が出てくるケースがあり、
現状をそのまま切り取って伝えるだけでは、
ネガティブな印象を与えてしまう可能性もあります。
ネガティブに見えやすい情報については、
改善の方向性とあわせて伝えることが有効です。

例えば、休憩時間が安定的に確保できていない場合でも、
「制作物の見直しや業務分担を進めており、
休憩しやすい体制づくりに取り組んでいます」など、
現在の取り組みや今後の改善方針を示すことで、
単なる課題ではなく“変化している組織”として伝えることができます。
“改善しようと考えている”という姿勢を示すことも、
園の誠実さが伝わるポジティブな情報になります。
変化の激しい時代で進化する園は、求職者にとって「期待」を抱かせることに繋がります。

続いて、求職者に対して、具体性を高めていくべき点を解説いたします。

<具体性を高める発信ポイント>
① 「働き方」の見える化をすること
求人を検索すると、多くの園で
「残業少なめ」「働きやすい環境」といった表現が使われていますが、
この言葉は一見分かりやすいようで、実は不安を生む要素でもあります。

例えば、「残業少なめ」と言われたとき、
月5時間程度をイメージする人もいれば、それ以上を想定する人もいます。
「働きやすい環境」と言われたとき、
プライベートとのバランスを想像する人もいれば
人間関係といった人的環境をイメージする人もいます。

残業に関する情報であれば、具体的な数字を提示することや
「通常保育では殆ど無いが、
行事前の2週間は残業が増える傾向がある」といったように
実態と傾向をセットで伝えることで、
リアルな情報ながらも過度な不安を避けやすくなります。

② 「人間関係」は仕組みを示す
「アットホームな職場」という表現はよく使われますが、
距離が近くて相談しやすいと捉える人もいれば、
プライベートとの境界が曖昧そうだと感じる人もいます。

ここで必要なのは、感覚的な情報ではなく仕組みを示すことです。
例えば、1年目には必ず先輩がつくのかどうか、
上司への相談はどのようなタイミングで行われるのか、
初めて取り組む仕事はどのようにして覚えるのかなど、
具体的な関係性が見えることで、
「自分が孤立しないか」という不安を解消することができます。

③ 「成長」の道筋を描く
「成長できる環境です」という言葉もよく使われますが、
抽象度が高くなりやすいため、
年次ごとのキャリアパスを伝えましょう。

例えば、1年目はどのような役割を担い、
3年目には何ができるようになっていくのか、
また、結婚や出産を経た後には、どのようなキャリアの選択肢があるのか
といった未来を具体的に示しましょう。
実際に働く教職員の経験事例を添えることで、情報のリアリティが増します。

 

情報発信不足は、“分からない不安感”を与えますが、
現実を見せる発信は、“理解できる状態”に変えることができます。
結果として、納得して就職する人が増え、
早期離職の抑制につながり、定着や活躍に発展していきます。

特にZ世代は、良い園を探すだけでなく「自分に合う園」を探しています。
採用活動は、どれだけ魅力的かだけでなく、
どれだけ園について理解される状態をつくれるかが、これからの採用の分岐点になります。

また、昨今の採用・育成の難しさを踏まえると、
「採用すること」だけでなく「定着させること」まで含めて考えることが重要です。

特に、早期離職のリスクが高まっている状況においては、
新卒採用だけで人材確保を完結させるのではなく、
既卒採用や非常勤パートも含め、
柔軟に人材確保の方法を検討していく視点が求められます。

4月は、これから徐々に活性化していく就職活動に向けて
自園の採用活動を見直す絶好のタイミングです。
ぜひ、自園の理解度を高める発信にチャレンジしてみてください。