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来年度以降の制度の動きと押さえるべきポイント
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「 従来の考え方と若者を中心に大きく変化している考え方を理解した うえで
処遇改善等加算一本化や人的資本経営に対応していきましょう」
※ 最後に処遇改善等加算一本化の運用にかかわる注意点を掲載してお りますので、
ご確認いただければと思います。
こども家庭庁では9月の頭に
来年度の保育関係予算概算要求の概要について
公表されました。
また、9月26日にGCLIPでは、
施設型給付制度攻略セミナーを開催いたしました。
毎年のように制度の変化が起こり、
押さえなくてはならないポイントは増えています。
例えば保育関係予算概算要求を確認すると、
「こども誰でも通園制度」については現在の
「乳児等通園支援事業」という名称から
「乳児等のための支援給付交付金」という名称となり、
予定通り給付交付金になるということが示されています。
しかし、まだその具体的な内容は予算案の中では記載はなく、
上限時間や一人当たりの単価などは示されていません。
すでに乳児等通園事業を行っている園については、
これからのこども家庭庁の動きをしっかりとチェックし、
内容の変更があった場合には再度検討をする必要があります。
今回のメルマガでは来年度の保育関連予算と、
先日セミナーにてお伝えさせていただいた内容を踏まえ、
来年度に向けて制度関連で押さえておくべきポイントについて
特に重要であると考えられる二つに絞って
お伝えさせていただきます。
●保育DXと経営情報の見える化
来年度の予算を確認すると保育DXに関する予算が
しっかりと確保されています。
特に施設型給付園については
経営情報の見える化によって「ここdeサーチ」
について触れる機会があったと思いますが、
保育DXと経営情報の見える化は大きくかかわってきます。
保育DXは例えば以下について電子化を進め、
より簡単に、スピーディに、効率的に
申請などが進むようにしていくものです。
・保活(園を選ぶ、見学する、入園申し込みする)に関すること
・園から行政への各種申請に関すること
・こども誰でも通園制度に関すること
上記の中で保活に関することについては、
園を選び、見学するまでの流れを
システムの中で行っていくということが想定されており、
東京都では実際にテスト的に運用が始まっています。
<参考:東京都の保活ワンストップポータルサイト>
この保活ワンストップポータルサイトの中で
各施設の情報を確認することができるようになっていますが、
この情報は「ここdeサーチ」で入力した情報が反映されています 。
ご覧になっていただくと特に保活の場合は
「ここdeサーチ」内の施設情報の箇所が多く反映されている
ということがわかるのではないかと思います。
この東京都のサイトについても
来年の4月からは国がスタートさせる、
全国展開するシステムに移行するということになっていますので、
来年の4月からは全国共通でこういったシステムが使用され、
保護者の園選びに影響を与えていくということが予想されます。
「ここdeサーチ」への入力について、
そこまで力を入れていないという園についても、
来年の4月からは特に閲覧可能性が高まっていきますので、
今一度ご入力情報をご確認いただき、
来年度に向けて内容の検討をしていただければと思います。
セミナー内では特に記載する内容について、
園の独自性や、これからの園の姿勢などを示していく上で
文章型の記入欄がとても重要な部分になると
お伝えさせていただきました。
必須項目となっている数字的な部分はもちろんですが、
特に任意項目となっている文章型の部分への入力に
力を入れていただければと思います。
●処遇改善等加算一本化で求められる変化と人的資本経営の重要性
若者を中心に、働くということに関する意識が
大きく変化していることを捉え、
それについての準備を進めていく必要があります。
今年度、処遇改善等加算一本化がスタートし、
さらに求職者にとって重要な内容であると考えられる
経営情報の見える化がスタートしました。
経営情報の見える化の項目の中には、
モデル給与や給与の決定方法、福利厚生、
有給消化率や時間外労働について、職員の満足度などの
情報を入力する箇所があるためです。
処遇改善等加算一本化の内容と経営情報の見える化の内容をまとめ ると、
以下について整備、向上を求めていることがわかります。
・キャリアパスの設定(給与テーブル、評価制度の構築)
・フィードバックの仕組み構築
・人的資本経営(エンゲージメントの向上)
前述した働くということに関する意識の変化が
大きく関わってきていますので、
その変化を十分に理解した上で、
準備を進めていく必要があります。
GCLIPでは、働くということに関する意識の変化は、
以下の三つにまとめられると考えています。
①「安心感に対する定義」の変化
②「仕事そのものの捉え方」の変化
③「欲求と報酬価値」の変化
一つずつ簡単に解説をさせていただきます。
①「安心感に対する定義」の変化
仕事を通して得る安心感の定義が従来世代と
仕事を通して得る安心感の定義が従来世代と
Z世代では大きく変化しています。
従来世代は終身雇用や倒産リスクのない組織など
「生活保障」に安心感を覚えていたに対し、
Z世代は意見の言いやすい、風通しの良い風土や
パワハラの無い心理的安全性が土台にあってかつ、
スキルアップや自己成長の機会がある
「環境の安定」こそが安心感になると言います。
現代では一つの組織に所属をし続けるという発想が
なくなりつつありますので、
今現在の安心感よりも、将来的な安心感と考えた場合に、
スキルアップや自己成長という視点についても
実は安心感として大きくなってきているということを
捉えておく必要があります。
だからこそ、経営情報の見える化の中では、
人的資本経営の項目の中に、
人材育成に関する内容が問われています。
②「仕事そのものの捉え方」の変化
従来とこれからでは仕事そのものの捉え方も
従来とこれからでは仕事そのものの捉え方も
大きく変化しています。
「仕事の中に人生がある」が従来の仕事感だったのに対し、
これからの仕事感は「自分の人生を構成する要素として友人、
余暇、家族、趣味などと同等のポジションに仕事がある」
という捉え方になってきています。
だからこそ、法人側のありたい姿と、
働き手のありたい姿をお互いに理解しながら
どれだけその姿を合わせていくことができるか、
というエンゲージメントの発想がとても重要になっており、
人的資本経営の項目にある従業員満足度は、
まさしくこの部分が問われています。
③「欲求と報酬価値」の変化
個々人の欲求についても従来から大きく変化してきています。
「残業は当たり前、褒め言葉よりも先立つもの(お金)」を
優先した従来世代に対し、
Z世代は“限定合理的な感情人”と呼ばれ、
先立つものは大事だけれど、「褒め言葉で承認し、 ねぎらってほしい」
ことが優先される場合も少なくないと言います。
つまり、豊かさの最先端で生まれ育ったZ世代は
先立つものは支給されて当たり前だし、
感情報酬が不十分だと満たされない心理構造が構築されているよう です。
だからこそ処遇改善等加算一本化の中では
キャリアパス要件が区分1の要件となり、
その中でまさしく感情報酬を与えていくことができる場である、
フィードバックを行っていくことが求められています。
処遇改善等加算一本化と経営情報の見える化を
ただ単純な制度の変更として捉えるのではなく、
時代の変化から生まれた新しい方向性であるということを
しっかりと理解した上で対応していく必要があり、
これからの組織論、マネジメントを考えていく上で、
とても重要な要素となっています。
ぜひ来年度に向けて
・キャリアパスの設定(給与テーブル、評価制度の構築)
・フィードバックの仕組み構築
・人的資本経営(エンゲージメントの向上)
について上記内容を踏まえ、 準備を進めていただければと思います。
最後に、 9月2日に発信された処遇改善等加算一本化に関するFAQの中に 、
区分3の研修要件の算定人数に園長先生を含んでよいかどうかにつ いて、
法人役員の場合は不可であるという内容が追加されました。
以下がその内容です。
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Q.法人の役員は、 常勤の場合でも賃金改善の対象になっていませんが、
加算額を算定する上で、「園長又は主任保育士、副園長、
教頭、主幹教諭、主幹保育教諭等であって、
副主任保育士・中核リーダー・専門リーダーを対象とした
別に定める研修を修了している者」 に含めることは可能なのでしょうか。
A.役員については加算額の算定人数には含まれません。
当該規定は、副主任保育士・中核リーダー・専門リーダーが
園長等にキャリアアップしたときに、
加算額の算定人数から除外しないことを念頭に設けたものとなりま す
(なお園長等になって研修を受けた場合も
加算額の算定対象に含めて差し支えありません)。
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今までの説明では園長先生の研修についても
研修要件の算定人数に含んで良いと捉えられる発信がされていまし たので、
園長先生に限らず、法人役員の研修の算定人数に含むことを
想定されていた場合は、注意をしていただければと思います。
来年度からは本格的に一本化のルールが適用されます。
ぜひお気をつけて運用を行っていただければと思います。
