DIARY

【ワカモノと非若者の距離感をつかむ ーZ世代化する社会ー】

==================
ワカモノと非若者の距離感をつかむ ーZ世代化する社会ー
==================

<本文のポイント>
・イタくない程度にイケてるを装う人たちで構成される社会とは?
・「ブラック社会」と「ゆるブラック化社会」の諸問題とは?
・「不安」と「ガチャ」のはざまで揺れる現代社会の課題とは?
・それでもあるべき姿と信じる道を貫いて、出会うべく人と出会う努力をしよう!
 
 
 
<本文>
↑舟津昌平著『Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち』
を、是非皆さんにご一読いただきたくご紹介いたします。
 
 
「イタくない程度にイケてるを装うワカモノたち」
と言う、見事なまでに現代社会を言い表すフレーズは、
著者が指摘する”Z世代化する社会”を理解するうえで
非常に重要な役割を担っています。
 
この表現が見事で言い得て妙だなと感じるのは、
近年、政治や芸能等の世界でよくみられる、
今まさに我身を襲っているマイナスの現象に対して、
その事実から自分の行動を差し引いて考える傾向にあり、
且つ「自分以外の何かが原因でたまたまそうなっているだけ」で、
私はそんなに、言われてるほど悪くないんだよ!と必死で繕う
“社会の未練がましさ”を映し出している所にあります。
 
 
本書によると、世の中は‟脱ブラック化”を実現し、
‟ゆるブラック化※”へと蛻変、進化(?)していると言います。
その背景となる若者を中心とした社会の構造変化を
300頁超に渡り解説する大変読み応えのある書籍です。
 
※労働環境に大きな問題はないものの、働きがいを感じられない(企業)
 
近年新卒で就職した若者が年度途中にあっさり退職したり、
退職代行なるサービスを活用して忽然と姿を消したりするなど、
業界を問わず若者の早期退職に注目が集まっていますが、
この行動の背景には「成長を実感できない不安の解消」
「就職ガチャのアタリ探し」があると著者は指摘します。
 
 
 
まずは「成長を実感できない不安の解消」についての解説。
 
若者は高校や大学で地域社会が抱える課題を解決すべく
ビジコン(ビジネスコンテスト)やPBL(Project Based Learning)を通して、
仮想社会をかじる程度に経験する機会が多く与えられていると言います。
ちなみにこの手の”学習”は若者の「成長実感」を満たす機能を十分に果たし、
若者の存在価値を認めたり、自己有用感を与える作用があるようです。
(※成長実感はあくまで成長しているように感じられることであり、
  実際に成長している訳ではない、というところがポイント。)
 
しかし、実際に就職したときにこの手の経験が、
「自分は他所では通用しないのではないか?」という不安の引き金になるようで、
これら経験が4回以上ある者の初職離職率が25.4%に上るのに対し、
未経験者のそれは11.7%程度にとどまっていると言います。
この結果に対し著者の舟津氏は次のように指摘します。
 
余り世間や社会を知らないと、(働くって)こんなもんか、と考え
辞める気が起こらないが、”社会を経験(学習)”することで、
「もっといい会社がある」「ここではいけない気がする」という
気持ちが沸き起こり、会社を辞めるというメカニズムが働くのだ。
 
実社会における「成長実感」と学生時代の「成長実感」の
間に起こる感覚のギャップが不安の原因となり退職に至るという
なんとも皮肉な結果が指摘されているわけで、
本書ではインターンシップという名の社会をかじる経験に対しても
ある種の警笛を鳴らしていたりします。
 
 
次に、「就職ガチャのアタリ探し」についての解説。
 
先程、成長実感は成長とは違うという注釈を入れましたが、
著者は「成長実感に実際の成長は必要ない」と断言します。
この前提に立って物事を考えると真実が見え隠れします。
 
・ワタシが成長できないのは、ワタシを叱ってくれる上司がいないから…
・友達が成長しているのは、恵まれた環境に就職したから…
ワタシが引いた就職ガチャはやっぱりハズレだったんじゃないか…
 
「ありがとう」などの些細な言葉は成長を実感するうえで、
とても重要な役割を果たしますが…、実社会では上記の通りに
「他責」がベースにある人物に対して「ありがとう」という
感謝の念が心からの形となり投げかけられることはありません。
 
尤も「労働法」で雁字搦めに縛られた今の企業組織に他責の若者と
本気で対峙する社員を援護するユトリなどあるはずもないわけで…
 
こうして”ゆるブラック化(誰にも咎められない)”した環境で、
成長を実感することのできない若者はこんな風に感じるらしいです
 
「ワタシの引いた就職ガチャはハズレだった(だけだから)、
 (再度きちんと)探せばもっと良い職場があるはずだ!」
 
仮に学生時代の友人や同じ業界に就職しているみんなが、
自分と同じように感じているなら”探しても無駄だ”となるけれど、
それを許さないのが、SNSと転職エージェントで、
SNSを開けばキラキラしたかつての友人の姿があり、
転職エージェントは今の職場に不満のあるアナタに、
「ぴったりの職場があります♪」と耳元で囁くわけです。
 
これらSNSと転職エージェントは、
「アタリはどこかにあると錯覚させる」ガチャ思想
確固たるものに至らすに足る存在といえそうです。
 
いかがでしょう?
 
メルマガ読者である皆様の組織においても少なからず
紹介したような事例に対して「そういうのあるよな・・・」
という感覚があるのではないでしょうか?
 
少なくとも10人程度の小規模組織である
GCLIPでさえも「なるほど!」と頷ける話ばかりです。
この書籍のタイトルは「Z世代化する社会」であり、
「Z世代の社会」ではないところが最大のポイントです。
著者は書籍の冒頭でこう切り出します。
 
「ミイラになる可能性を常に背負ってでしか、
 ミイラ取りは成立しないのである」
 
Z世代が注目される「社会構造」は、
われわれにも同じように影響している(くる)という
指摘をしているわけですが、
Z世代に起こっている現象を注意深く観察し、
自分達もそうなっていないか?と、
繰り返し振り返る事がとても大切だと思うのです。
 
・新卒だけがすぐに辞めるわけではありません。
・思うように結果が出ない時、自分以外の何か(誰か)に責任を見出すこともあります。
・「自己満」のSNS投稿だってすれば、「いいね」だって欲しいのです。
 
一方で私たちは、大人として自責で生きることの大切さもまた知っています。
若者が陥る「不安」や「ガチャ思想」の軌道修正の手助けも必要です。
 
筆者の指摘する、”ミイラになる可能性”など露程にも知らず
「見えない不安を消す為」や「アタリの無いガチャを引き当てる為」に
を活用したビジネスの標的になるケースは実に多いものです。
 
転職活動も婚活(結婚活動)もそれを求める人の為というよりは、
どちらかというとエージェントの収益に傾倒したモデルに見えるの
心がゆがんでしまっているからでしょうか?
 
ある理事長先生から人生の指針となる言葉を教えてもらったことがあります。
「就職、結婚、不動産取得はすべてご縁だから、大切に育むようにしなさい。」と。
まったくその通りだと思います。
性質的にご縁が占めるウェイトが大きくなるライフイベントにおいて、
ご縁を引き寄せる努力と引き寄せたご縁を正解にする(努力)が必要だ!
という意味での「大切に育む」というスタンスはまさに”自責”です。
 
ご縁には「正解」がないからこそ、
引き寄せた、或いは与えられた目の前のご縁を自らの意志と努力で
「正解」にすることでしか未来への道は切り拓けないのです。
 
 
本書が指摘しているZ世代化する社会とは、
「若者のみならず社会活動を営むすべての人がZ世代化している」
という文脈で綴られています。
 
若者を叱る(注意、助言等も含む)という行為が
たちまち非難の的となる社会では、
”若者とかかわらない”という選択が主流になるようです。
 
この書籍のテーマ、”Z世代化”に抵抗がある場合は
とても面倒ではありますが、遠慮なくそこに異を唱え、
あるべき姿に導くべく惜しみなく
時間と労力をかけていただきたいと思います。
私ももちろん全力で若者とかかわっていきます。
 
今の社会が不十分で、理想の未来に導くためにも、
自責でもって現状を切り拓いてまいりましょう!