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【心理的安全性の担保による「抵抗の解消」】

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心理的安全性の担保による「抵抗の解消」

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<記事の概要>
・時代の流れるスピード感が「1年ひと昔」となった…
・情報の民主化とオンラインコミュニティの充実で
 「悪貨が良貨を駆逐する」を実現しつつある就活戦線
・”機能的価値”よりも”情緒的価値”の提供に宿る成熟マーケットの「抵抗の解消」
 
 
<本文>
先日野中より、「これ見て下さい」といわれ、
差し出されたスマホの画面を見てみると、
そこには実習生のこんな投稿が書かれていました。
 
いま実習中なのだけど、10時間勤務で休憩なし!
続けて、10時間は長いと思っているけど、
誰にも言えなくて困っているがこれは普通なのか?
という短文の書き込みが投稿されていました。
 
これを見た同じ境遇にいると思わしき人が、
それぞれの思うがままにまた投稿を繰り返す…
というSNSのコミュニティがありました。
 
これを見て、ここでもまたひとつの
「抵抗」が生まれているのだと感じると同時に
ふと思ったことが2つあります。
 
まずひとつは、
教育(保育)実習って法律上はそもそも労働なのだろうか?
 
そしてもうひとつは、
インターネットの発達による情報の民主化がもたらした
極端に細分化された世論形成。
 
 
ひとつめですが、
所属学校の履修科目であり、授業ですので労働ではありません。
しかし、その実態については年々厳格な予防線が張り巡らされてます。
文科省高等教育局は平成31年1月時点で
「大学等の授業科目として行う企業内実習等の実施に係る 労働法上の留意事項について」
の中で、労働法適応への注意喚起として、
学生との間で実習内容、条件を記載した確認書を取り交わし、
労働者性を伴う働きを回避するよう注意を促しています。
要するに、
実習前に何を、どのくらいやるか?
できれば書面を取り交わし共通理解して始めようね!
実習生は見学、体験的内容が中心ですよ!
実習生を労働力とみなしてはいけませんよ!
という注意を促す内容です。
 
PDFにて原文を添付しますのでご参照ください。
 
 
ふたつめは、
「教育実習」「労働基準法」で検索すると、
それなりの情報が数多く見つかります。
 
実習者の意識の変化への驚きもそうですが、
受入れる側、送り出す側の意識もここまで変わっていたのか!
と、正直驚きを隠せません。
参考になる検索結果のURLを添付します。
 
こちらは教育実習における労働者性の指摘と
改善提案について論じた紀要への寄稿論文です。
幼稚園での教育実習の実態についてまとめ、
どんなことを学生が課題と捉えていて、
その課題への一定の解決策を示しています。
 
次は幼保ではなく、小中高の実習について、
より辛辣な内容ですが労働と実習の核心をついています。
労基法を遵守しない環境を強烈に批判していますが、
一方で学校教員のなり手不足を、
「職業としての持続可能性の提示」によって防ごうよ!
という啓蒙活動を軸とした投稿とも言えそうです。
 
 
さて、この手の情報は検索結果の中から比較的見やすい
(検索結果として上位表示される)情報へアクセスしますので、
ボンヤリした情報が先ほどのSNSに質問として寄せられ、
またそのコミュニティ(SNS)の参加者が(正誤は別として)
それぞれの立場で感想や意見を自由に発信するので、
質問者は自分にとって最も都合のいい(しっくりくる)回答を
自分の元へ持ち帰る構造がネット上で出来上がっています。
 
情報の民主化により得られる情報量は増えましたが、
情報処理能力や理解力と言われるリテラシーは
情報量に比例して平等に上がっているわけではありません。
そのため、情報を得ても理解にムラができます。
また、SNSは特にタイムラインの流れが速いので、
その時に得られる情報の中で情報処理をする構造となり、
法律上1日8時間以上働いてはいけないのに、
なんで”実習”では法律がスルーされちゃうの?
という感情が煽られる効果が少なからず現れます。
 
結果として件のコミュニティでは、実習≒労働となり、
労基法に準拠していないのはおかしい!
という世論が瞬時に形成されることとなります。
 
 
ここに挙げたふたつの課題へのアプローチとして
有効なのはやはり「説明」と「納得」に尽きると思います。
前提として、労基法に準じることはもちろんですが、
実習生の受入前にオリエンテーションなどを開催し、
実習という授業特性、つまり、
幼稚園教諭や保育士になるために必要な知識や技術を
体験的に身に付けるものであることを説明したうえで、
この体験は授業であり労働ではないことを
各園であらためて丁寧に説明する機会を設けることで、
これらの課題はある程度解決できると考えられます。
 
 
ただ、ここで再度目を向けたいのは、
文部科学省高等教育局が出している通知です。
この通知では労働者性(使用従属性)について、
比較的強調して触れられている点は
今の世相を強烈に映し出しているように思います。
 
労働者性(使用従属性)というのは、
次の①~⑧の要素を総合的に考慮して判断されるようです。
 
①仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の自由の有無
 →依頼した業務を断れる自由
②業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
 →経営者から指揮監督を受けているか?
③勤務場所・時間についての指定・管理の有無
 →”働く”場所は指定され管理されているか?
④労務提供の代替可能性の有無
 →”業務”を本人以外の誰かに替えられるか?
 
———>ここまでが実習と密接に関係する
 
⑤報酬の労働対償性
 →労働時間等によって報酬が変化する
⑥事業者性の有無
 →機械や器具の所有や負担関係や報酬の額などで判断
⑦専属性の程度
 →兼業(アルバイト)などをしている場合は低いと判断される
⑧公租公課の負担
 →源泉徴収や社会保険料の控除があるか?
 
特に①~④が実習生と受入園との間で
頻繁に発生する事象ですが、
労働者性を協調する背景は、
昨今の労働市場のトレンドを鑑みますと、
本質的には学生を実習生として扱うか?
それとも労働者として扱うのか?
ということが問題ではないと思っています。
 
実習生にしてみれば、
将来役立つ知識と技術を身に付けようとしているその組織は、
果たして私が安心して働くことができる環境なのか?
ということを学生の視点で見極めようとしています。
角度を変えてみれば、
求職者は「安心して働くことができる環境」を
探すためにSNSのコミュニティに参加していて、
業界ごとに細分化された
就職情報が集うコミュニティで展開されている議論は、
凡そこの“安心して働くことができる環境”というテーマで、
互いを励まし合う闊達な意見交換が展開されています。
 
給与や休暇等労働時間などの目に見える“機能的条件”は
園側で出したネット上の求人情報で確認することができますが、
実際に働いてみてどうなのか?
実習で感じる人の温もり、園の雰囲気はどうか?
などの”情緒的条件”は経験者のフィードバックが有力な情報になります。
 
そのため、
求職者にとっての「抵抗を解消」する上で重要なのは
この”情緒的条件”となります。
 
SNSで展開される口コミはスピードと量という点で
確かに高い価値があります。
ただその情報の多くは、
誰かが見知らぬ他の誰かに対しての発信のため、
時間が経過した比較的低温の情報になりがちなのは否めません。
 
一方、実習生の受入れに際しては、
将来幼稚園教諭や保育士になる相手と直接対話することで、
比較的高温の情報を届けることができますので、
交じりっけなしの事実として相手に届くことがいいところです。
実習生の受け入れの際に是非参考にしてみて下さい。
 
 
採用においても、園児募集においても、
成熟社会の「抵抗の解消」は「心理的安全性」と
密接に関係してきますので、
機能面の打ち出しよりも意味をどう相手に伝えるか?
に力を入れて相手に届けるようにして下さい。
 
 
組織における心理的安全性とは、
この組織では、対人関係のリスクをとったとしても
(しこりが残らず)安心できるという共通の思い、
と定義されています。
 
 
繰り返しになりますが心理的安全性の担保は、
採用において最も大きな「抵抗の解消」となりますので
メルマガ読者の皆様は、
是非意識していただければと思います。