DIARY

【 子どもは“嗜好品”“贅沢品”という価値観の正体に迫る?! 】

<本文のポイント>
・多胎児に係る費用的クライシスを子ども家庭庁のシナリオは救済できるか?!
政治と現場の意識の乖離について経験からの提案!
消費者マインドが創るこどもは“贅沢品”という価値観
・そして昨今の人々の価値観と向き合う私学の姿勢とは?
 
 
<本文>
人の持つ価値観は環境によってつくられると言いますが、
”子ども”に対する価値観は同じ日本でも、
1940年代と現在の僅か70-80年程度でがらりと変わり、
今の時代”子どもは贅沢品”という価値観
若者の間で広がっていると言われます。
 
 
確かになぁ…と深く頷く出来事がありました。
 
 
実は、我が家に先々月双子が産まれました。
一人が低体重児で生まれたためそのままNICUに入院となったのですが、
約一ヶ月入院し、検査費等諸々含めてかかった費用をみて落胆しました。
請求書に336万円と記載されていたのです・・・。
 
勿論、保険証と医療証をもってその費用のほとんどが減額され
実際の支払いは1/100程度に収まったのですが、
一時的にでも300万を超す請求書を手にしたら、
この額を一時的にでも支払える子育て世帯はそう多くはないはずですし、
「この先やっていけるのだろうか…」と、不安が生じます。
 
養育医療補助制度というのもあるため、
実際に支払った3万円も後日還付される模様です。
ただ、この手続きをするにも
それなりの時間と労力がかかります。
 
日本の優れた社会保障制度のお陰で、
今回の周産期医療に伴う支出の大半は補われています。
本当にありがたいことですが、
この一連の流れを、個人が各機関でやるのではなく、
医療機関と行政機関が連携し、
出産をする誰もがより簡易的で使いやすい仕組みを
構築することで、先に触れた
「子どもを産み育てる不安の払しょく」になると思います。
 
保険証は少なくとも、
名前を決定し出生届を提出してからじゃないと申請できませんし、
医療証も保険証申請以降になります。
 
医療事務の方もこのあたりのシクミは熟知していて、
「保険証と医療証が完成したら改めて精算しますので、
後日また来てください。」と、にこやかに言ってくれるのですが、
「であれば、今請求書出さなくてよくないですか?
と、どうしても疑問に思ってしまいます。
 
出典:「令和5年度予算案」子ども家庭庁
 
この4月に発足した子ども家庭庁の予算のポイントにある
「年齢や制度の壁を克服した切れ目ない包括的支援」が、
まさにこのような事態の解消だと思うのですが、
どうも制度が先行して、現場の対応が追い付いていない…
というのが今回の体験で浮き彫りになりました。
 
制度が「絵に描いた餅」で、付け焼刃的な印象が拭えません。
 
実際には十分な補助を受けることができるのに、
仕組が煩雑過ぎて、その恩恵を受けている印象がない…
というこの現状を改善すれば、
少なくとも「子どもは”贅沢品”」というイメージの
一部を解消することができるのではないかと思います。
 
また、異次元の少子化対策について岸田首相は6月1日に、
「保育所等の空き定員を活用して
 3号認定以外の0-2歳児の受入れを前提とした「こども誰でも通園制度」は
 2024年からの本事業化に向けてモデル事業を実施していく」
と発表しました。
 
この4月からモデル事業として始まったばかりで、
検証もままならない状況下での方向性の決定に反発する意見が
ヤフーニュースのコメント欄に多数寄せられています。
 
何らかのエビデンス(検証結果)があって決定しているのでしょうが、
この決定に至るまでのプロセスやこの制度導入の必要性が国民に理解されない、
つまり、分かりにくいということが、
結果として反対意見を招くことになっていると思うのです。
 
他方で、所得制限を撤廃し第三子以降には
18歳まで一律30,000円の現物給付を実施する
という施策も同時に打ち出しています。
 
多子世帯にとってこの決定は大きな影響を与えますが、
この政策によって子どもをたくさん産もう!
とはなり難いという課題もあります。
ここに対しては、神奈川県相模原市にある認定こども園、
相模中央学園理事長の大貫先生が
日経新聞にて実に明快な提言をしています。
 
幼保の文化 理解足りぬ行政 現場「社会が共通認識を」:日本経済新聞
 
 
さて、
政府の決定は多様性が広く認められる社会だからこそ、
多様な民意を反映した政治的判断という見方もできますが、
細かいニーズに対応しすぎることで、
また新たな民意を生み出しているという見方もできます。
 
一方で、社会が成熟することで、
行政・民間問わず充実したサービスの受益者となった私たちは、
あらゆるサービスの”消費者”となって
あらゆる面で「受け身の姿勢」になっていることも
今の日本の閉塞感の一因になっているとも思います。
 
このような意識の”変化”が子どもは”贅沢品”という
価値観を生み出している正体ではないかと思います。
 
 
園経営とは直接関係ない話で熱くなってしまいましたが、
私学は特に相手が「消費者」では成り立ちません。
消費者とは、常に最良のサービスを求め動きます。
自園の価値をしっかり定義して、
この部分は時代の流れに合わせて受入れますが、
この部分はお母さん協力してくださいね、
という相互理解を深めて教育とサービスに明確な線引きを
する必要があると私たちは考えています。
 
最近の本メルマガでも「こども誰でも通園制度」よりも
「地域子育て支援拠点事業(子育てひろば)」の方が、
幼稚園が0-2歳の名簿を集めて入園につなげるのに適している
と発信するのも、相互理解を深める機会になるからなのです。
 
勿論、立地や方針によって取るべき戦略は変わりますので、
「こども誰でも通園制度」を取り入れることによって
さらなる園経営の発展を目指すこともできるはずです。
 
ただ、相互理解のための「分かり易い説明とシクミ」は
是非構築して、募集圏内の子育て家族と
丁寧なコミュニケーションを心がけるようにしてください。
 
 
より良い経営に向けて一助になれば幸いです。