DIARY

【JohnsonTownにてナラティブを体験する】

<本文のポイント>

ジョンソンタウンという共体験型まちづくりにあるナラティブを知
・あの林が動いた!クラシノ家具店が提案する共体験型ナラティブマーケティングの事
幼稚園に置き換えてできる共体験型ナラティブマーケティングのサンプル
 
 
<本文>
埼玉県入間市に「ずっと住みたい未来のまち」をコンセプト
米軍ハウスと呼ばれる平屋のアメリカン古民家と
平成ハウスと呼ばれる現代的低層新築住宅が、
樹々の間に点在して建っている自然豊かな居住商用混在型の
レジデンスプレース”ジョンソンタウン”という人気の”まち”あります。
 
・住民同士の距離が近く、町全体で子育てをする空気感がある
オシャレな雑貨店や人気の飲食店が入居していて町外からの人の観光地となっている
・町中に管理棟があり、保守安全管理や町内ルールの徹底がはかられている
・隣接地に保育園や小中学校があり、子育てしやすい環境があるため若い世帯に人気がある
 など、人気の理由は様々です。
 
 
ジョンソンタウンは(株)磯野商会が管理するまちで、
計79棟の建物が住宅用、商業用として賃貸されています。
その歴史は古く、1938年に磯野商会の前身である、
磯野農園が現在の入間基地にあった陸軍航空士官学校に勤める将校たちのために
平屋の日本家屋を建設したのが始まりと言われます。
1945年の終戦とともに進駐軍に接収されジョンソン基地となり
1950年の朝鮮戦争開戦に伴う米軍増派に伴い、
4年後に米軍ハウス24棟を増築したものの、休戦と共に米軍撤退が相次ぎ、
1978年には全軍撤退に伴いその多くは取り壊され、
残った米軍ハウスの老朽化は進んでいったようです。
 
この老朽化に対応すべく「磯野住宅復興策」の検討が1996年に始まり、
2003年に「良い住宅地にしたい」という磯野商会の意向
「平成ハウス」の設置と米軍ハウスのリノベーションに着手し、
2009年にそれまでの「磯野住宅」を「ジョンソンタウン」へと改名しました。
この「ジョンソンタウン」という名称は米軍「ジョンソン基地」に因んで
住民により命名されたと言われています。
 
このジョンソンタウンですが、
2015年に「都市景観大賞(国土交通大臣賞)」の受賞を皮切り
2017年に「日本建築学会賞」「キッズデザイン賞(少子化対策担当大臣賞)」を受賞、
2021年には「グッドデザイン賞(経済産業大臣賞)」を受賞
多様性を受け入れる、バリアフリー、インクルーシブなまちづくり、
そして、オルタナティブ(画一的な住宅地開発に対して)として、
高く評価されており、瞬く間に人気のまち街道を駆け上がりました。
 
 
 
 
さて、前置きが長くなりましたが、
GCLIPでは現在「共体験」というキーワードを掲げ、園児募集や採用において、
ナラティブマーケティングを提唱しています。
ジョンソンタウンは2003年の磯野商会側の良い住宅地にしたい」という
まちの復興宣言とともに地域住民に「共体験」が伝播し、
”イミ消費”(先週8日林配信のメルマガ参照)の展開によって、
地域住民や過去の住民を巻き込んだ見事な復興を遂げています。
まさに、ナラティブマーケティングによって活性化した事例です。
 
先週金曜日GCLIPでこのジョンソンタウンにて視察勉強会を行いました。
 
百聞は一見に如かずで、GCLIP勉強会一行は、
このまちがなぜ人気があるのか、体感することになりました。
 
入居している商業施設に「クラシノ家具店」という
家具や生活雑貨を取り扱っている店舗があります。
 
この店舗のコンセプトは、
「本当に良いモノだけをおススメしたい。」にあり、
国内の「ロングライフデザイン」の製品を厳選して
愛着とコダワリをもって販売しています。
 
見開きのパンフレットにはこうあります。
「愛おしいと思う気持ちを大切にしたい」
このフレーズは究極の商品愛であり、販売愛であり、
そして、顧客への敬意が表されています。
 
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取扱商品は、正規代理店となっている
老舗家具のカリモク60を中心に、
ビールメーカー各社の瓶ビール専用グラスや
亀の子たわしが展開する束子やシューズ専用刷毛にスポンジ、
浅草の老舗かなや刷毛の歯ブラシなど、
時代が変わっても継承され支持を集める商品群、
文字通り、「ロングライフデザイン」が集約されていました。
 
何より驚いたのは、
ショップキーパーの”コジマさん”の商品知識と提案力です。
 
この店舗に入るなり、普段物欲も控えめで寡黙なあの林が、
コジマさんと何やら談笑していたと思ったら次の瞬間、
「これいい!家族分買おう!」となっていたのには驚きです。
 
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普通のナイロン製の歯ブラシ、
豚毛の歯ブラシと馬毛の歯ブラシの違いを
丁寧に説明するコジマさんの説明は、
何よりも商品愛があふれていて、
これら商品を人々に届けたい!という販売愛があります。
ですから、説明を受けた人がその良さをすぐに誰かに
話したくなる(こんな商品を買ったんだと自慢したくなる)、
そんな力を秘めています。
 
これぞまさにナラティブマーケティングであり、
ひとつの物語の受け手が主体になり次の誰かを巻き込んでいく
「共体験」なのです。
 
このお店にはほかにもナラティブの仕掛けがありました。
 
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写真ではちょっと見にくいのですが、
自分達の仕入れのコダワリを分かり易く顧客に届けているのです。
内版上の棚は、洗濯コーナー。
2段目は食器洗い用のスポンジと食器洗い用洗剤コーナー
3段目に束子と靴洗い用刷毛のコーナー。
各製品のコダワリと他の同等の製品との違いなどを
簡潔に説明したポップがあしらわれています。
 
 
これは、とても大事な取り組みです。
どの商品も正直テクノロジーが進化した今、敢えてこれらを買うという選択をしなくても、
楽でより簡便に代替してくれる製品はいくらでもあります。
 
ところが、ここに来ると、
”手間がかかってもこれらを選択したくなる…”
そんな不思議な感覚になります。
 
正直、ここで販売している商品の多くは、
インターネットを介して購入することができます。
でもネット上ではなく、ここで買いたい!
そう思えるのは、やはり”私”の暮らしをイメージして、
提案してくれる店員さんの存在であり、
ディスプレイによって私の脳内に描かれる
”ある種理想の生活”があるからだと思うのです。
 
これが、モノ余りの成熟社会において
ナラティブマーケティングによって売主と顧客が、
またその顧客と新たな顧客がつながる接点となり、
終わりなき物語として次へと繋がっていく
今の時代の人気企業の魅力なのです。
 
では、これを幼稚園に置き換えて何ができるか?
 
3枚目の写真のように
自園のコダワリ(教具、教育写真、遊具写真、職員写真等)を丁寧に展示し、
ポップをつけてそのこだわりを説明するという手もあります。
 
コンシェルジュのような役割を担う人材を登用し、
自園のコダワリを見学者に説明するという手もあります。
 
とにかく、相手が自園(のコダワリ)を共に体験できる機会を
つくっていく事がこれからのマーケティングには必要です。
 
 
是非、意識して次の一手を打ってみてください。