DIARY

【園経営のやり方が変わる年】

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 園経営のやり方が変わる年
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<本文のポイント>
・人的資本経営が求められる時代のメカニズム
・人間にしかできない仕事を追求する人の特性
・退職代行の存在意義
令和7年度公定価格試算ソフトβ版の申し込み方法について
 
<本文>
メルマガ前回号では、
制度変更による「人的資本経営の重要性」について説いています。
 
園経営に限らずですが、企業・組織と呼ばれ、
人が集い社会的価値を生み出す集団において、
「人的資本」という考え方がとても重要視されています。
 
人間の欲に際限がないように、
その人間で構成されている社会が進化し成熟(≒豊かさを増す)すると、
あらゆる面の「不」が解消され、より多くの人にとってさらに
満足度の高い社会を追求するようになるようです。

 
成熟社会とは、
水道、電気、通信、交通などの生活インフラが当たり前に整っていて
「生きるための苦労」が少ないので、
企業は便利さ、効率、美しさ、体験価値といった「付加価値」で
差別化をはかるようになります。
技術の発展が目覚ましい社会なので、時間的・精神的余裕が生まれ、
労働時間は短縮され、平均寿命は延びて、選択肢が増加することにより
「もっとラクに」「もっと自由に」という志向が育つ社会になります。

健康で文化的な生活が高いレベルで保障された社会と言えます。

さて、このような社会で起こることは何でしょう?
 
人間の意欲の低下・無気力化(”アパシー”現象)
努力や試行錯誤が不要になれば、
「挑戦する意味」や「達成感」が希薄になるので、
特に成熟度合いが増した社会をデフォルトとして生きている若年層では、
人生の目的意識が持てないことやヤリガイが見いだせないといった
未来へのモチベーションを見失う人が増えていくと言われています
 
昨年6月4日配信のメルマガで記載したとおり、
Z世代ではなく、Z社会ですので、
若者だけがそうなるのではなく、社会全体がZ化するわけですから、
上記の”アパシー現象”は社会全体を覆うことになっていきます。
 
人的資本経営というのは端的に
この社会の成熟によって起こる”アパシー現象”への対策として
有効な手段になると考えられます。
 
人的資本経営について前回のメルマガで林は次のように解説しています。
 
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特に[人材が持つスキルや能力の捉え方]と
「マインドの持ち方」という二つの箇所を確認すると、
その違いが良くわかるのではないかと思います。
 
人を大切にする経営では、
人材を会社の持ち物として捉え、
個人の能力を「意図に沿って」成長させる
という方向性であることに対して、
 
人的新本経営では、
人材のスキルや能力は個人の持ち物として捉え、
「個人の意思に沿って」成長する個人の能力を借りる
という発想になります。
 
なぜこのような考え方が重要になるのかというと、
これからの人手不足時代において、
採用やマネジメントを考えた場合に
人的資本経営を意識した経営を行わなければ
人手不足の影響を大きく受けてしまう可能性があるためです。
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裏を返すとこれは、
会社が個人のスキルやモチベーションを引き出すのではなく、
スキルやモチベーションの高い人材の能力をに出資(投資)して、
得たリターンを会社と個人で互いに納得のいくように分配する、
という考えでもあります。
 
つまり、人的資本経営とは本質的に、
高い成長意欲を持たなくとも豊かな暮らしが実現し得る成熟社会で
それでもなお、成長意欲をもって自己を生成発展させようとする人材が
より活躍できる環境整備の一環として用意された仕組みと言えます
 
いま、就学前教育・保育業界は「量から質へ」と
国を挙げて存在価値転換の真っただ中です。
 
それでも出生減による生産労働人口の減少と
成熟社会特有の”倦怠感”で労働市場は慢性的に人手不足です。
その中でも所定の人員を確保し配置しなければならない
就学前教育・保育業界において、
昨今のトレンドである人的資本経営を実現するのは
容易なことではないと思います。
 
この状況下においてもなお、敢えてお伝えしたいのは、
人的資本経営に踏み切ってください!ということです。
 
少し脱線しますが、昨今ブームとなっている退職代行も
”アパシー現象”の一つと捉えると理解はできずとも、納得はできそうです。
 
退職を代行する会社が自社のサイトに
毎日「本日の退職者(代行サービス利用)数」を公表しているのが
4月当初からニュースで取り上げられていました。
 
不を解消するサービスやアイテムの開発はビジネスの基本と言われます。
この点において退職代行サービスは本質を突いているといえるでしょう。
しかし、ギャンブルなどと同様で極めて依存度の高いサービスだとも思います。
2回目以降50%OFFという”メンバー割”も導入されているので、
サービスを提供する企業側の戦略も相まって依存度が増す仕組みも構築されています。
 
退職代行モームリを運営するアルバトロス社は退職代行サービス以外にも、
転職支援サービスに加え、人材定着コンサルティングなどを手掛けています。
 
退職代行で退職を援助し、転職支援という形で次の職場提供に関与し、
企業側には「こうすると人が定着するよ!」という依存度の強い”三角関係”を構築する、
”マーケティング的”には極めて優れた仕組みと言えそうです。
サービスそのものが誰からも喜ばれる優れたものということではありませんので、
 くれぐれも誤解なきようにお願いいたします。
 
代行による退職は企業側にとっては一時的に痛手となりますが、
人的資本という観点で考えると、このサービスに乗らない人を見極めて、
適切に投資をするという指標をひとつ作れるのは
自法人が人的資本経営に移行する大きなメリットと捉えることもできます。
 
オックスフォード大のマイケル・オズボーン博士らが
2013年に発表した10年で消える職業というものは、
そのほとんどがまだ存在しています。
ただし、その業務量は格段に削減されています
例えば、電話のオペレーターは、
本題の手前ギリギリまで音声ガイダンスがリードして、
”ラストワンマイルの用件”のみオペレーターが対応することで、
人的資本の有効活用を実現しています。
 
ファミレスのレジは、ほぼセルフで行いますし、
配膳はウェイター、ウェイトレスに代わりロボットが担っています
 
車の自動運転技術の発達は目覚ましく、
米サンフランシスコでは既にタクシードライバーという仕事の一部は、
WaymoやCruiseという完全無人の”ロボタクシー”に代用されています。
 
このようにオズボーン博士の予測は現実となりつつあるのです。
本当の人材難はこれから来ると言われていますが、
20年後の生産労働人口数は5300万人程度の予測ですから、
現在と比較し2100万人程度の減少が見込まれます。
ざっくり東京都と埼玉県がなくなるくらいのイメージですので、
極めて大きなインパクトがあることがわかります。
 
人手不足の深刻さが増すその時に今ある余分な仕事は淘汰され、
本当に必要な仕事しか残らないような技術開発が実現していたと仮定すると、
人間である必要のない仕事はかなりの確率で淘汰されることになります。
 
問を立て(考え)、意味を見出し(状況判断)、
人とつながる力(感情の伴うコミュニケーション)を要するものは
人間にしかできない仕事として残ると言われています。
 
先の退職代行なるサービスは、
今の社会に必要なサービスとして定着していることを鑑みると
極めて逆説的ですが、
この人間にしかできない仕事に必要な持つべきスキルを
弱体化させる仕組みとなり得るため、
利用の有無、前職のやめ方などを注意深くヒアリングすることで、
人的資本経営時代の入り口で人を見極める”フィルター機能”として
活用することに意味があると言えます。
 
さて、そろそろ大詰めです。
就学前教育・保育施設において人的資本経営を実現していく上で重要なのは、
なんといっても自園の方針です。
自法人はどんな価値を社会に提供するのか?
そのために、どんなマインドを持った人にどんなスキルを持った人に集ってほしいのか?
5年後のビジョン、10年後のビジョンは何であり、
それらをなぜ実現する必要があるのか?
 
まずはこれら方針の基礎情報を整理し、
それを実現するためにフィードバック型評価制度を構築し、
賃金テーブルも人的資本に積極的に投資できる形に整理して、
意欲的な人材を積極的に採用していきましょう。
 
人(人的資本となり得る)が来ない状況は、どの業界でも変わりません。
であるならば、業界で最も魅力的な人的資本への投資戦略を体系的に整えて、
自園の魅力とともに地域に提案していきましょう!
 
そのために、自園では人的資本への投資にどのくらいの費用捻出ができるのか?
金額を知る必要があります。
令和4年まで国が公定価格の試算ソフトを出していましたが、
近年は単価表の公表にとどまり、試算ソフトがリリースされていませんでした。
人的資本経営を実現のための人件費充当額を算出するのに、
まずは今年の公定価格収入を計算したい!というニーズに応えるべく
GCLIPでβ版を作成しました。
こちらのソフトが欲しい!という方は
タイトルに「「R7試算ソフトβ版希望」」と書いて、
①園名 ②経営者氏名 ③メールアドレス ④電話番号
を明記の上このメルマガ(info@gclip.net)へご連絡ください!
 
今は厳しいかもしれませんが、未来は明るいです。
是非、前向きにとらえて今を乗り越えていきましょう!