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【創立10周年記念特別セミナーを終えて】

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創立10周年記念特別セミナーを終えて

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11月24日(金)にGCLIP創立10周年を記念して、
東京台場のHiltonホテルにてセミナーを開催いたしました。

当日は全国から80名を超す経営者にお集まりいただき、
おかげさまでセミナーは成功裏に終えることができました。
ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。

さて、セミナーは第1講座を、
GCLIP副社長に就任しました林より
「抵抗の解消」と幼稚園の新たな「マーケティング指標」を
提案させていただきました。

今の時代、幼稚園における「抵抗」とはシンプルに、
「給食」と「預かり」、そして「特定負担額などの実質負担」が
抵抗を生み出す主な要因になっています。

これら「抵抗」はもともとあったものではなく、
社会の変化と共にマーケットに徐々に浸透しはじめ、
2015年の「子ども子育て支援新制度」開始以降、
就学前教育保育の利便性の成熟度が増したことで
一気に可視化した、と分析しています。

特に幼稚園と1号児受入をメインとする認定こども園では、
以下の3つの要因から園児数を次第に減らしてきています。

・出生数の低下
・専業主婦世帯率の減少
・1-2歳児保育利用率の急増

予定では来年からここに、
「(仮)こども誰でも通園制度」が本事業化することになっています。
これによって、
0-2歳で「園を選択する」ことが標準化される時代が到来します。

今年の園児募集データはこの事実を裏付けています。
1歳児からの受入れが可能な園の
募集定員充足率は概ね80%以上をキープしており、
2歳児以降の受入れしかできない園の
募集定員充足率は75%以下に留まる傾向が出ています。

そしてこれは、
我々のような民間の調査機関側の論点ではありますが、
新制度園が増えたことによって、
「認可定員」と入園者の実数との乖離が大きくなり、
「定員充足率」という数値が殆ど意味を持たなくなりました。

そこで定員充足率の代わりに「ブランド指数」を用いて、
自園の募集力をはかり、商圏内でどの程度の影響力があるのか?
適切に自園のチカラをはかることで強化すべき点を
洗い出していくための指標として活用しています。

近年洗い出されたデータから導き出した結果をみると、
幼稚園において強化すべき点は「抵抗の解消」となります。

先に述べた園児数を減らす3つの要因を
カバーするための提案として「利便性偏差値」を新たに開発し、
偏差値55以上を目指すことを提案させていただきました。

※利便性偏差値は以下計算式ではじき出すことができますので、
 メルマガ読者の皆様も是非ご参照ください。

林は続けて興味深いデータを提示しています。
商圏内すべての園が認定こども園化したエリアでは、
保育所よりも認定こども園に
人が集まっていることを示すデータです。

これは、言い換えると、
全園が利便性偏差値50のエリアにおいて
「差別化要素である自園の教育的魅力」が際立つ、
ということの裏付けでもあります。

これは、現時点においては速報値であり、
あくまでも傾向ですので、今後より深く調べていく必要はありますが、
教育的魅力を打ち出して成果を出している園もありますし、
利便性を充実させても集まらない園があるのも事実です。

利便性偏差値が55未満で園児募集の活路を見出したい!
という方は、一度試してみる価値はあると思いますし、
社会構造からみてもやはり利便性偏差値には説得力がありますので、
是非、参考にしてみて下さい。

第2講座では、仙台育英学園高等学校野球部を率いる
監督の須江航(すえ わたる)先生にご登壇いただきました。
2年連続夏の甲子園決勝の舞台へと導いた名将からは、
「日本一の”実力を身に付ける”若者を動かすマネジメント」と題して、
90分間実にみのり多きお話をいただきました。

園経営において学ぶべき人材育成のポイントが沢山ありましたが、
結論から言いますと、
「すべては自分次第」というマインドセットを
どれだけ真剣に生徒(若者)と共有できるか?
という点に絞られそうです。

SNSの発展により、若者は高い情報処理能力を持っています。
それによって、「美しいものだけ」が若者の中に残り、
理解した気持ちになってしまうのが若者に多いと言います。

須江先生は、この若者の特徴を相手と共通理解する手段として、
「分かること(たまたまできた=できたつもり)」と
「理解する(いつでもできる=高い再現性)」の違いに着目し、
相手の話を徹底して聞くことに注力してきたと言います。

その過程で
「相手は”自分が聞きたいことだけを求めている”」ことを見出し、
1対1で「伝わる言葉」だけを徹底的に考えぬいたのだと思います。

世に言うZ世代(25歳くらいまでの世代)を「選択ネイティブ」と捉え、
相手が持つ豊富な情報量を活かした具体的な”育成像”と”成長の姿”の提示が
若者を導く有効なマネジメントになりそうです。

ビジネス界でも1on1ミーティングが注目されていますが、
まさに、この1on1を各学年30名いる部員一人ひとりと
やり抜くことで「日本一へ導く」のが須江先生のマネジメントなのです。

須江先生は子どもたちに対する「大人の役割」を
教えることではなく、思考(情報)の交通整理をして、
いつまでにどうなっているか?を明確化し、
伴走することだと定義づけています。

これは、20代前半の新人職員に対して
全てのミドルマネジメント層が身に付けておきたい、或いは、
身に付けておくと極めて有効な知識と技術だと思いますので、
是非、心理的安全(この人に話しても大丈夫!)の伴う
1対1の思考の交通整理を実施してみて下さい。

第3講座は教育改革実践家の藤原和博先生にご登壇いただきました。
藤原先生は、伝説のリクルートマンと呼ばれ、
リクルート時代特に、営業と新規事業立ち上げによって
数々の偉業を成し遂げた方で、
2003年4月より民間人として初の公立中学校長に就任され
世間の注目を集めた方でもあります。

藤原先生には、
「正解のない時代の教育と必ず食える1%の人材育成」と題して90分間、
「新しい時代の知的エンターテイメント」をご披露いただきました。

藤原先生のここ10年の著書でも頻繁に触れられる、
「情報処理力」と「情報編集力」そして、「基礎的人間力」の
育て方とその比率を中心にお話しいただきました。

藤原先生は1998年以降日本は成熟社会に突入したと言います。
加えて、成熟社会とはつまり、正解のない社会である、と。
この正解のない社会では、相手が膝を打つような「納得解」が重要で、
この納得解は「情報編集力」によって創り出されるといいます。

なので、10歳くらいまでは徹底的に「想定外」に触れる
「遊び」を経験することが大切だと説き、この経験の蓄積は
将来開かれる「引き出しの数」と比例すると言います。

故スティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業式で放った
有名なスピーチの一節”Connecting the dots”と似ていませんか?

ジョブズ氏はConnecting the dotsを次のような意味で使いました。

将来を予想して、点(知識や経験など)と点をつなぐことはできない。
後々の人生で振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできない。
今やっていることが、将来、自身の役に立つ(点と点がつながる)と信じて取り組みなさい。

藤原先生は、子どもたちが将来正解のない課題にぶつかったときに、
遊びの中で経験したあの情報(経験)とこの情報(経験)を結び付けられるように
10歳くらいまではとにかく「想定外」に出会うような遊びが経験できる
環境を用意することが情報編集力を高める鍵ですよ、と教えてくれました。

もうひとつ重要な点として、「基礎的人間力」の育成がありますが、
これは、50%は家庭内での親の導きによってきまり、
残り半分は、環境と複合的要素で形成される人柄によってきまるとのことでした。

藤原先生は冒頭で「稼げる人を育てよう!」と言ってましたが、
これは最も重要なメッセージだと思います。
”稼ぐチカラ”は””選択できるチカラ”とほぼイコールです。
正解のない社会における人生の豊かさとはおそらく、
沢山の選択肢のなかから、最も有効なひとつないし複数を
その時々で拾い上げるチカラだと思います。

はじめに示した業界を取り巻く数字だけみると、
私立幼稚園の未来に明るい兆しは見えにくいものです。
しかし数字の裏側を見れば、教育環境を丁寧に整え、
教育力(子どもにとっての最善)を絶えず磨いている幼稚園の未来は、
やはり、明るいものだと私たちは考えています。

是非、子どもにとって、働く職員にとって素敵な未来を
経営者の皆さんがつくっていっていただければ幸いです。
次の10年はそんな皆さんを全力で応援したいと思っております。

長くなってしまったので、最終講座の解説は、
次の機会にじっくりさせていただきます!

オンデマンド配信がありますので、よければお申込み下さい!

【オンデマンド配信】
2023.11.24(金)開催終了|GCLIP創立10周年セミナー
◆詳しくはこちら↓
https://www.gclip.net/seminar/3612/