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公定価格の見直しからわかる
防災意識の高まりと“命を守る力”を育む響育
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〈本文のポイント〉
・地震大国日本を襲う巨大地震の被害想定
・公定価格の見直しからわかる防災意識の高まり
・“自分で自分の命を守る力”を育む教育事例
〈本文〉
今年1月17日で、
兵庫県や大阪府に甚大な被害をもたらした
阪神・淡路大震災の発生から31年となりました。
厚生省大臣官房統計情報部によると、
この地震で亡くなった0~4歳児の数は118名。
その多くが、窒息・圧死を原因に命を落としていることが分かっています。
震源だった兵庫県や、被害の大きかった大阪府などの
就学前教育保育施設では、震災のあった時期に合わせて、
避難訓練が行われました。
避難訓練の様子を伝えるニュース映像等には、
先生の呼びかけを頼りに
椅子や机の下に隠れて身を守り、
お友達と手をつないで避難経路を進む
園児の姿が映し出されていました。
これから起こるかもしれない大地震を警戒するのは、
兵庫県や大阪府の就学前教育保育施設に限りません。
関東地方から九州地方への被害が懸念されている
南海トラフ巨大地震では震度7の揺れに加え、
太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波が押し寄せると想定されています。
また、2025年に被害想定を更新した
首都直下地震発生の可能性もあります。
政府の地震調査研究推進本部の見解では、
30年以内に東京都直下を震源とした
マグニチュード7程度の地震が発生する確率は約70%です。
そんな地震大国日本にある就学前教育保育施設での
防災対策を強化しようと、国はこれまで公定価格の見直しを行い、
来年度も行う予定です。
例えば、主幹教諭等専任加算、主任保育士専任加算等の要件の見直しです。
主幹教諭等専任加算の加算取得を目指すためには、
主幹教諭1名を専任化させて、さらに複数の指定された事業や
取り組みを行っている必要があります。
その取り組みの一つに「災害時における地域支援の取組」があります。
これは災害があった場合でも、
エッセンシャルワーカーは働く必要があることから、
近隣の園や市区町村と連携をして、
災害があった場合のエッセンシャルワーカーのお子さんの
預ける場所の確保や、
災害が起こった場合のマニュアルの整備を行う等の取り組みです。
さらに令和8年7月から
安全計画を策定していない場合の減算が
適用されることに決まりました。

安全計画とは、園児や保護者に対する安全指導や園で行う避難訓練の
スケジュール、内容などを記した計画書のことを指します。
すでに策定している園でも
安全計画の内容を1年以上実施していない場合は
減算の対象となるため、注意が必要です。
このように、国も力を入れている就学前教育保育施設の防災対策。
国が示す防災対策の中でも避難訓練にふれているように、
いざという時に必要になるのは、
園児の“自分で自分の命を守る力”です。
そのような子どもたちの力を
音楽に合わせた体操で教えている取り組みがあります。
市民団体「リズムオブラブ」の主宰 渡辺光美さんは、
現在、山梨県を中心に
童謡やポップな音楽に合わせて、
身を守る動きやとるべき行動を覚える振り付けを考え
防犯・防災・交通安全等の指導をしています。
渡辺さんが振り付けを担当した
防災リズム体操~地震編~「命が大事!」では、
歌詞で災害の恐ろしさや、備え方を伝えています。
全身を使う振り付けで、
足腰も鍛えられる体操です。
■YouTubeにアップされている「防災リズム体操~地震編~『命が大事!』」の映像
対象者は親子連れの未就園児から、
園児、高齢者まで様々。
県内の就学前教育保育施設で
講師も務めたご経験があります。
その長年の取り組みに対し、
昨年には文部科学大臣から
視聴覚教育・情報教育功労者表彰を受けています。
渡辺さんは約20年間、小学校教諭を務め、
2009年にリズムオブラブを創立しました。
転機となったのは、小学生8人が犠牲になった
「大阪・池田小児童殺傷事件」でした。
私は、地方新聞の記者をしていた経験があり、
渡辺さんにも取材をさせていただいたことがあります。
渡辺さんは当時の悲惨な事件を振り返り、
「安全神話が崩れた瞬間だった。
小学校では教えきれない、
もっと大切なものがあるのかもしれないと思った」
と、おっしゃっていました。
そう考えた渡辺さんがたどり着いた教育が
‟自分で自分の命を守ることができる力”を育む学びでした。
渡辺さんはこれを、
「ふるさと山梨みんなで一体となって、
健康・安全の課題を解決する」
という思いを込めて「郷育」と呼んでいます。
そして今、この「郷育」を
人の心に故郷の音を響かせることを目指した「響育」に
アップデートしていきたいと、奮闘中のようです。
災害リスクが現実的なものとなった今、
防災教育は“特別な取り組み”ではなく、
経営環境の変化の一部として捉える必要があります。
制度として求められている対応や、
日常の保育の中での防災への向き合い方など、
あらためて見直していただければと思います。
