<本文のポイント>
・“こうあるべき”という概念を脱する
・足を運んだすべての人を惹きつける
・あらゆる角度から魅力を捉え直す
先日、GCLIPが開催している勉強会「地域一番園実現勉強会」
立川にある体験型ミュージアム「PLAY! MUSEUM」をプロデュースする
ブルーシープ株式会社 代表・草刈大介様をゲストにお迎えしました。
ブルーシープ株式会社は、絵本の出版をはじめ、
PLAY! MUSEUMの企画・運営などを手がける会社です。
「ありそうで、ないことを」というコンセプトを掲げ、
アートやデザインを軸に、多彩な事業を展開されています。
今回の勉強会では、“新しい価値を生み出すとは何か”をテーマに
「懐古主義」にとらわれず、挑戦を続ける姿勢について学びました
その取り組みの数々は、幼稚園・認定こども園の経営にも
大いにヒントとなるものでした。
今回は、ブルーシープ株式会社の取り組みの中から、
特に園経営に活かせる視点をいくつかご紹介します。
■ “こうあるべき”という概念を覆す
PLAY! MUSEUMの最大の特徴は、
「展覧会とはこうあるべき」「美術館とはこういう場所」
という既存の枠組みを一度疑い、問い直している点にあります。
美術館と聞くと、「近寄りがたい」「知識がないと楽しめない」
といったイメージを持たれがちです。
しかしPLAY! MUSEUMは、子どもだけでなく大人も一緒に楽しめる、
間口の広いミュージアムとして設計されています。
触れる、遊ぶ、身体を動かす。
体験を通してアートと出会うことで、
「面白い」「もっと知りたい」という感情が自然と生まれる。
その導線づくりが、随所に見られました。
この考え方は、現在の幼稚園・認定こども園を取り巻く環境と重な
保護者層は、専業主婦世帯中心から共働き世帯中心へと変化し、
1歳児からの入園も珍しくなくなりました。
幼児教育無償化に加え、地域によっては保育料のさらなる無償化も
「費用を払って預ける」という感覚そのものが変わりつつあります
また、園には教育機関としての役割に加え、
子育て支援拠点としての機能も求められています。
こうした状況の中で重要なのは、
顧客ターゲットの変化を正しく捉えること、
そして園の価値をどう認識してもらうか、という点です。
保護者の選択肢は、幼稚園から認定こども園に
家庭像は、専業主婦世帯から共働き世帯に変化しています。
園が進化していることを伝え、地域の認識を更新していくことが不
私たちは、この考え方を「パーセプションチェンジ」と呼んでいま
たとえば、
「幼稚園は3歳から通うところ」
「幼稚園は専業主婦、保育園は共働きが通うところ」
「幼稚園は教育重視、保育園は利便性重視」
といった認識は、いまなお根強く残っています。
だからこそ、入園前の保護者とできるだけ早い段階で接点をつくり
幼稚園・認定こども園に対するイメージを更新していく
コミュニケーションが重要になります。
■ 足を運んだすべての人を巻き込む
PLAY! MUSEUMのもう一つの特徴は、
「子ども向け」「大人向け」と対象を分けていない点です。
来場したどの世代も楽しめるように設計されており、
子どもが夢中になる空間であると同時に、
大人の想像力や知的好奇心も刺激されます。
過去に開催された「エルマーのぼうけん展」や「大どろぼうの家展
作品世界に入り込める体験型ミュージアムでした。
ただ鑑賞するのではなく、
童心に返って遊ぶような感覚を呼び起こします。
さらに、原画やラフスケッチ、制作プロセスに触れられる展示によ
作品が生まれる背景や作家の思考にも自然と目が向きます。
子どもは直感的に楽しみ、大人は深く味わうことができ、
家族それぞれが異なる楽しみ方をできる空間が成立しています。
この「足を運んでもらうすべての人に焦点を当てる」という視点は
園運営においても欠かせません。
入園の低年齢化が進む今、園選びでは教育内容だけでなく、
家庭のライフスタイルに合っているかどうかも重視されます。
特に低年齢児向けの子育て支援事業では、
母親が「ここに来るとホッとできる」「また来たい」
と感じられる空間づくりが、集客や満足度に直結します。
園に求められているのは、
子どもを預かる場所であることにとどまらず、
「この園に関わることで、家族全体が豊かになる」
という価値の提供なのです。
■ 「テーマ」をあらゆる角度から捉え直す
当日視察した「大ピンチ展!」は、
ミリオンセラー絵本『大ピンチずかん』をもとにした体験型展示で
絵本では、子どもが日常で出会うさまざまなピンチを、
大ピンチレベルの大きさと「なりやすさ」で分類しています。
展覧会では、ピンチを立体的に体験できるだけでなく、
「見る」「なる」「考える」「飛び込む」という
4つの切り口で再構成されていました。
巨大なケーキやこぼれた牛乳など、
ユーモラスな“ピンチ”を体感できる仕掛けが随所に散りばめられ
ピンチという概念を新たな視点で捉え直す構成になっていました。
草刈様は、価値を創出するためには、
“こうあるべき”から脱却し捉え直す挑戦が大切だと話されていま
「こうあるべき」という懐古主義にとらわれてしまうと、
本来対象となるはずの人たちを無意識のうちに遠ざけてしまう可能
PLAY! MUSEUMの取り組みが教えてくれたのは、
価値を高めることは、何かを“付け足す”ことだけではなく、
一度立ち止まり、「本当にそうだろうか?」と
自分を問い直すことから始まる、という姿勢でした。
もし機会があれば、ぜひ一度、通年を通して開催されている
皆様も、PLAY! MUSEUMに足を運んでみてください。
「誰に、何を、どう体験させているのか」という視点で館内を巡る
園の魅力発信や場づくりに通じる多くのヒントが見つかるはずです
「地域一番園実現勉強会」は、
2026年も引き続き、隔月で開催をいたします。
就学前教育・保育業界に限らず、
業界外からも選りすぐりの講師をお招きし、
園経営や組織づくりのヒントをお届けしてまいります。
詳細は、ぜひこちらからご確認ください。
来年も、皆さまの園経営に寄り添いながら、
より実践的で有益な情報をお届けできるよう、
GCLIP一同、尽力してまいります。
皆さまにとって、2026年が
実り多い一年となりますことを心よりお祈り申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えください。
