DIARY

自園の”価値”を再定義してみる?

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自園の”価値”を再定義してみる?

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<本文のポイント>
・20年という大昔を振り返る
・時代の変化と「多様性」の進化
・価値の細分化と「付加価値」の作り方を問う
・冒険的世界観の素敵な事例
 
 
 
<本文>
十年一昔と言うことわざがありますが、
その人の年齢や経験によってこの捉え方は変わります。
20代前半の人にとって10年前は、
まだ子供時代でしょうから、遠い昔に感じられ、
50代の人にとっては、意外と近く感じるかもしれません。
感じ方は人それぞれですが、
10年という時は確実に経過していて、
「昔」と「現在」を懐古的に漠然と振り返るのではなく、
もう少しディテールに焦点を当ててみてみると
より実態の伴う時の流れを感じることができます。
 
今回はさらにもう一昔前(20年前)の2005年を
少しのぞいてみたいと思います。
 
2005年の主な出来事の検索結果は、
・郵政民営化を争点とした衆議院議員総選挙が行われ、自民党が圧勝する
・ JR福知山線脱線事故が発生し、107名が犠牲になる
・マンションなどの耐震強度偽装問題が発覚し、社会問題化となる
・ライブドアがニッポン放送の株式を大量取得し、フジテレビとの対立を深める騒動の勃発
・京都議定書が発効し、地球温暖化対策が本格化する
・SNS黎明期(2004年にMixiスタート)
・日本の総人口が1899年以来、初めて自然減少に転じる(人口減少の入口)
といったものが挙げられます。
 
当時はスマホはまだ登場しておらず、”ガラケー”が全盛期を迎えていました。
インターネットの普及により、”消費者”側の情報アクセスが強化され、
個人の趣味・嗜好が細分化されたことで、
メディアによる画一的な価値形成社会の終焉を迎えた時代でもありました。
 
20年たった今はどうでしょう?
人口減少による影響は本格化し、
人手不足や地方の過疎化問題は枚挙にいとまがありません。
就学前教育・保育業界を振り返ってみると、
幼稚園の2005年と2025年の比較における変化は
特に目を見張るものがあるのではないでしょうか?
 
この20年の間に認定こども園や新制度へと移行した園、
制度移行はしていないけど、低年齢児受入可能な保育施設を付加したり、
幼稚園とは別に保育所やこども園、学童や児童発達支援事業を
新たに開始した法人も少なくありません。
 
2005年の幼稚園在籍者数は約174万人でしたが、
2025年では69万人まで減少しています。
一方で、保育所の利用者数は、
2005年で約199万人だったのに対し、
2025年では271万人(認こ園含む)となっています。
 
因みに、0ー4歳人口はそれぞれ、
2005年:558万人
2025年:392万人です。
 
就学前教育・保育施設の利用率は
2005年は66.8%だったのに対し、
2025年には86.7%まで上昇しています。
25-44歳女性の就業率は、
2005年当初は30-34歳の就業率が凹んだ状態の
通称”M字カーブ”が話題となっていた時代で、
60%台後半と言われていました。
これが2023年時点で80.8%となっており、
M字カーブは過去のものとなってしまいました。
 
 
この20年の間に最も進んだと感じるのは「多様化」という現象す。
特に女性のキャリア形成が一気に開花した20年です。
キャリアと生活の両立において、
時短、美容、ヘルスケア、自己投資、ウェルビーイング等の
ニーズが顕在化した20年と言えます。
 
11月28日に開催したセミナーで弊社副社長の林は、
「 」&Ⅰのバランスが重要だという提言をしました。
「 」に入るのは、就学前教育・保育施設の場合、
「こども」になり、「こども」はもちろん大事だし、幸せになってほしい、
でも、そのために「私」が自己犠牲を払うのは…ちょっと違うと思う。
採用であれば、「法人」の目標達成、理念実践はもちろん大事だと思う、
ただ一方で「私」たちの自己実現は担保されるんですよね?
というような具合に、子どもと私、法人と個人のバランスが取れた運営、
踏み込んでいえば、提案がとても重視される時代になりましたので
運営スタイルを現代風にアップデートすることを提案していました
 
この提案の背景にあるのが20年という時を経て変化した社会のニーズであり、
そこへアジャスト(調節)することで一番園化を実現していきましょう!
というマーケティングの根底を成す時流に適応するための軸となるのです。
 
 
さて、ここで質問です。
園児募集というマーケティング活動の中で、
自園の価値を高めるためにどのような工夫をされているでしょうか
同じように職員採用というマーケティング活動の中ではどうでしょう?
 
先回のメルマガで林は「これをやればうまくいく」という正解は存在しない、
と明言していましたが、私もそう思います。
GCLIPは基本的にこの前提に立ち、各園の状況に応じて検討しています。
 
乳児等通園支援制度(こども誰でも通園制度)ひとつとっても
自治体ごとの対応がまちまちでいまだ勝ち筋が見えません。。。
満3歳児の受け入れを開始さえすれば上手くいく時代ももう終わりました。
1歳児の就園率は上がっているものの地域差がありバラバラです。
これをやったらうまくいく!という保証はなにひとつありません。
だから、今、目の前で起こっている変化に対応できることが
望む成果に近づくための唯一のカギになるのです。
 
話を戻しましょう。
自園の価値を高めるための工夫について問いましたが、
これも、工夫そのものにこれ!といった正解があるわけではなく、
「価値」というもののとらえ方を工夫していきましょう
というのが本メルマガの提案になりますので、少しお付き合いください。
 
 
まず、価値というものは次の3つに分解されると言います。
①基本価値(既存価値)
 →価値/価格が1以上だが限りなく1に近い価値
 →「想定内」の価値
 →不満にはならないが、満足!として記憶に残らない価値
②付加価値
 →価値/価格が2以上の価値(2倍喜ぶみたいなイメージ)
 →「想定外」の価値
 →満足として記憶に残り、人に話したくなる価値
③不要価値
 →価格/価値が1以下の価値
 →価値として認識されない価値
 →例)開くことのないスマホのアプリや触れることのないリモコンのボタン等
 
この3つの価値に照らし合わせて、
再度自園のマーケティングを問いなおしてほしいのです。
 
例えば、令和8年4月より「誰通」が開始しますが、
今の未就園児教室を同じ形態で運営した場合、相手にとって「付加価値」になるか?
或いは、「基本価値」として価値を維持し続けることはできるだろうか?
 
例えば、満3才児は満3歳の誕生を迎えるタイミングで受け入れているけど
親の立場に立った時に本当にそれは喜ばれているのだろうか?
つまり、「基本価値」ないし、「付加価値」になっているだろうか?
 
例えば、子育て広場と銘打って園庭開放を月に2~3度実施しているけど、
それは本当に必要とされているのだろうか?「基本価値」を維持する、もしくは、
「付加価値」を生み出すためにこの親子広場はどんな進化を遂げる必要があるだろうか?
 
例えば、実習で受け入れた学生を「最近の学生は打たれ弱いから」といって、
「指導」的な助言を避けているけど、それは本当に求められている受け入れなのだろうか?
成長もできて、楽しかった!と記憶に残る実習受け入れは果たしてできないものか?
 
現場の先生の意見をふんだんに聞きながら、こんなことを考える機会を
是非園内で創造してほしいと思っています。
 
というのも、先ほど触れた通り女性の社会進出の加速に伴い、
ウェルビーイングへのニーズはより顕在化していきます。
現場の最前線で母親と接している先生方がこのニーズの機微をとらえ、
変化の兆しに対する嗅覚が高いことは往々にしてあります。
 
「基本価値」は時間の経過とともに「定着する」か「淘汰される」かの
いずれかの道をたどります。
定着するための工夫はいかなる状況においても必要です。
多様性が最も進化した時代ですので、
経営者一人で考えるのではなく、園内にある人的資本のブレインを
有効活用できるよう協力して「基本価値」の定着化ないし、
「付加価値」の創造に努めてください。
 
 
余談になりますが、、、、
先日ある法人の年度末の会議に参加させていただきました。
とても素敵な回で職員の表彰や、形式的とは無縁の思いのびっしり詰まった感謝状の贈呈、
何より参加者を楽しませるためのコンテンツが終始ぎっしり詰まっていました。
経営者のみならず、経営幹部の皆さんと議論して考えぬかれた会した。
関係企業の方も来賓として大勢参加していましたが、
来賓にとっても第3の居場所ならぬ、
第2の家庭のような温かい空間になっていました。
 
来年度から英語教育を強化するため、外国人の先生方もたくさん参加していました。
基本的に日本語も話せるバイリンガルでしたが、
会議のスライドのすべてが日本語と英語の同時表記になっているのです。
会の途中でチーム対抗のクイズがあるのですが、外国人が多いチーム向けに、
グローバルな視点の問題が出題されていたりと「配慮」が随所にちりばめられていました。
恐らく外国人の先生方とっても第2の自宅のような空間だったのではないかと思います。
 
会を催すうえでの機能的価値(基本価値)に対して、情緒的価値を付加価値として、
提供するこの組織の心意気はとてつもない体験記憶として私の中に残っていくと思います。
 
普段の業務をしながらの準備もとても大変だったと思います。
でも、人に喜んでもらうことが自分の喜びなんだと言わんばかりに、
先生方が心から楽しそうに会を運営し参加するのです。
まさに「」&Ⅰの「バランス」の取れた取り組みだと思います。
 
経営者一人のチカラで組織運営をしていくのは極めて難しい時代です。
仲間のチカラを借りながら令和という未知の海原を航海していきましょう!