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離職を防ぎエンゲージメントを高める1on1
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処遇改善等加算の一本化に伴い、
処遇改善等加算取得のルールがいくつか改定されました。
例えばキャリアアップ研修受講が厳格化され、
人数A、人数Bそれぞれの所定数が
所定時間のキャリアップ研修を前年度末までに
終了していることが区分③を満額取得するうえでの
条件となり大きなインパクトを与えました。
また、区分①、区分②の取得に当たっては
職場環境の改善が求められ、
キャリアパスの構築やフィードバック面談による
質の向上を押し上げていくための
仕組みの構築が求められるようになりました。
GCLIPへの問い合わせも
キャリアパス構築に関するものが増えています。
処遇改善加算に関するルールなので、
私学助成の園には無関係!というわけではないのです。
ハースバーグの2要因理論では、
仕事における欲求を「衛生要因」と「動機付け要因」の2つに整理し、
それぞれ不満を引き起こす要因(阻害要因)と
満足につながる要因(促進要因)として説明しています。

上の図でもわかる通り、
「達成感」や「承認」「責任」などは満足要因となり、
「法人の方針」や「上司との関係」「評価制度・処遇」というものは、
未整備であることが不満要因となります。
就学前教育・保育施設のほとんどの園が
評価制度を整備しそれに基づいた育成計画を整えている環境で
自園が未整備となれば、阻害要因となり、
不満を引き起こす要因となってしまいます。
つまり、採用面でも定着面でも
マイナスに作用する可能性が潜んでいます。
整備することでマイナスの発生を抑止できるのであれば、
採用力強化、定着率向上の観点からもキャリアパスを整備することで、
採用における競争力を高めるのが望ましいです。
また、評価制度を整備し1on1ミーティングを実施して
実際に人が育つ仕組みを整え一人ひとりを導いていきましょう。
「人間関係」は阻害要因にも促進要因にもなります。
つまり、1対1の導きというのは人間関係を良好なものにしていく上でも
とても重要な役割を担うことになります。
若者の研究で有名な金間大介氏が分析する”イマドキの若者”の
心理面・行動面それぞれの特性を見てみましょう。
<心理的特性>
●目立ちたくない、100人のうちの1人でいたい
●変なことを言って浮いたらどうしようといつも考える
●人前でほめられることが「圧」 横並びでいたい、差をつけないでほしい
●自分で決めたくない(みんなで決めたい)
●自分に対する人の気持ちや感情が怖い
●自分の能力に自信がない など
心理面では目立ちたくないという気持ちが強く、
周りの目が気になるという特性があります。
<行動特性>
●素直でまじめ
●1対1の受け答えはしっかりしている
●協調性がある
●人の話をよく聞く
●言われた仕事はきっちりこなす
●自分の意見は言わない、質問もしない
●「先頭」に立たず、必ず誰かの後に続こうとする
●学校や職場では横並びが基本
●授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す
●場を乱さないために演技する
●悪い報告はギリギリまでしない など
行動面では個別対応を好み、
横並びで”全体の中に薄まる”ような特性があります。
今の時代の園経営において、方針書やマニュアルが重要な意味を持ち、
それに基づいた評価制度(自己評価のある360度評価)を
構築・運用していくことの重要性が窺えます。
少子化・採用難の時代は離職者が一人出るたびに組織は揺れ、
保育の質も経営の安定性にも影響を受けることになります。
打ち手は多々あるようですが、効果は一定ではありません。
その中で比較的効果が高いのが
1on1ミーティング(職員との定期対話)だと言われます。
実践の鍵は、
「心理的安全性を担保した定期的な対話」をすることにあり、
職員のエンゲージメント(愛着や貢献意欲)を高めることで、
結果として高い定着率とパフォーマンスを得るという効果があります。
心理的安全性を担保した定期的な対話の効果は、
GCLIP社内でも多角的に検証しているところですが、
一定のエビデンスたるものは見え始めています。
少し極端な例ですが、
本人の強み(できること、やりたいこと)に目を向けて
それを伸ばす1on1のコミュニケーションと、
会社側の要望(できるできないに関わらずやるべきこと)を
渡して「できるまで待つ」という育成手法。
業務開始時点で後者に心理的安全性はありませんので、
業務遂行上良好なコミュニケ―ションは生まれにくくなります。
こちらとしては良好なコミュニケーションを図っているつもりでも、
相手がそう感じなければやっていないのとなんら変わりません。
一方はしているつもり、
もう一方にその意図は伝わっていないとなれば、
両者の認識は180度違ってきますので、
良好とは程遠い関係性が構築されてしまいます。
このようなギャップをなくすための取り組みが、
360度評価であり、その評価表に基づいて行われる
1on1フィードバック面談になるというわけです。
マネジメントの成果というのは短期的にはとても見えにくく、
良しとされるものを定期的に継続していくことが重要です。
そこで、相手の成長を促し、定着率を高める1on1の手順について
以下にまとめますので、参考にしてみてください。
手順1:心理的安全性が担保される環境を整える
相手が心を開いた状態でコミュニケーションが取れる場づくりが大切です。
面談の目的を成長であることに絞って伝えたうえで、
書類やタブレット画面など視線が合う(同じ方向を向く)ようにすると
緊張がほぐれ心が開かれやすくなると言われます。
会話の冒頭にこれまでの頑張りや成長などを労うことから始めると
心理的安全性はさらに高まり、より話しやすい環境が整います。
手順2:よかったこと、困りごとを開示してもらう問いを立てる
相手が自分自身を客観的に内省する機会の提案ともいえますが、
以下のような質問が効果的です。
「最近うまくいっていることはどんなこと?」
「それがうまくいっている要因は何だと思う?」
「反対に課題を感じていることはどんなこと?」
「その課題と向き合うことで学んだことはある?」
このように自身の振り返りを促すオープンクエスチョンは
相手も話しやすく、課題・成果の共有もしやすくなるので、
互いにその後の会話の展開が期待しやすくなります。
手順3:相手の強みと成長を具体的に承認し次の成長をデザインする
若者の行動特性の所で触れている通り、
承認は相手のモチベーションを著しく高め、
更なる成長を促す”ブースター”になり得ますので、
面談をする側の手元に相手へのフィードバックを
予め用意し、成長した点を大いに伝えて相手の「自己有用感」を定期的に刺激し、
具体的に次の目指すべき姿を提示することで成長を促しましょう。
手順4:振り返りの共有による信頼関係のアップデート
相手がこの面談(1on1)をやってよかった!と思えれば、
信頼関係は必然的により強固なものになります。
さいごに相手にフィードバックを促す問いを発して、
次につながるクロージングになるのが理想的です。
「今回話してみていまどんな気持ち?」
「次回はどんなことを話したいと思う?」
等、次への期待感とともに面談終了とするのが良いです。
さて、ここまで読まれた方はお気づきかと思いますが、
1on1フィードバックは面談というより共に育つ場という側面が強いです。
面談をする側も相手からのフィードバックがありますので、
新たな課題の認識や解決に向けてのアクションが必然的に求められます。
勿論、面談を受けた側も次への課題と成長のアクションをするので、
そういう意味で「共に育つ」という認識はとても大切で、
新しい時代の組織開発において重要な成長因子となるはずです。
とても大切なポイントなので、繰り返しますが、
面談の目的が「寄り添い」に傾倒しないように注意してください。
相手の成長を促すことが最大の目的ですので、
課題の提示と乗り越える意識の育成をしっかりすることで、
相手を導く有意義な面談となるよう心掛けてください。
面談の実施については、
必ずしも理事長や園長といった経営責任者がする必要はなく、
信頼のおける経営幹部の方が実施することもあるでしょう。
いずれにしても、
「面談を受ける側が心を開いてコミュニケ―ションが取れる状態」
を、担保することで組織内にある課題や次の成長の因子を発見し、向き合うことで、
結果的に自園が時代に応じた成長を遂げていくことが大切です。
その目的を見失わずに自園にあった1on1フィードバック体制を整えてみてください。
