DIARY

【人手不足時代に知っておきたい「人的資本経営」】

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人手不足時代に知っておきたい「人的資本経営」
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・保育政策の方向性が「質」となり、
 「経営情報の見える化」「保育DX」「処遇改善等加算一本化」が進められていく
・人手不足時代の重要なキーワードである人的資本について
 基本的な知識と背景を理解し、経営情報の見える化においても、
 積極的に入力していくようにしましょう。
・賃金テーブルや評価制度はこれからの組織マネジメントにおいて

 重要な役割を担うと考えられるため、しっかりと構築しましょう!

5月23日にGCLIP主催の組織戦略セミナーが開催されました
 
今回のセミナーは令和7年度よりスタートする
「経営情報の見える化」「保育DX」「処遇改善等加算の一本化」
という三つの内容を中心に、その内容と対策のポイントをお伝えさせていただきました。
 
終了後、皆様からいただいたアンケートを確認すると
上記三つについてはまだ各自治体で不透明なところが多いという状況のようです。
 
しかしながら、いずれも令和7年度よりスタートするものということで、
できるだけ早い段階で情報を取得し、
適切な対応を取っていきたいところです。
 
今回のメルマガは組織戦略セミナーの内容の
一部をご紹介いたします。
 
①保育政策は「量」から「質」へ
令和7年度から始まる前述の三つの内容は、
こども家庭庁誕生から進めている
保育の「量」から「質」へということが
ベースとなって行われています。
 
例えば経営情報の見える化で言えば
人員配置やモデル給与、人的資本についてなど、
保育の質に大きく影響を与える人材に関する内容について
見える化の項目が多くなっています。
 
また保育DXを例にとっても、
見える化を通して公表される情報をもとに、
保護者や求職者にとって質が高いと考えられる園
選択できるようにすることが一つの方向性になっています。
 
処遇改善等加算一本化では特に区分③については
旧制度である処遇改善等加算Ⅱの人数A、人数Bの人数分、
研修の要件をクリアしていなかった場合、
クリアしている人数分しか改善額を出さないということになっています。
 
区分③は質の向上分と呼ばれ、以前のような考え方ではなく、
園全体で研修を行い、質を向上していく
ということが前提となっていることがわかります。
 
このように今年度から開始される三つの内容は
すべて保育の質に関わる内容であり、
保育政策の方向性が今までと異なり、
今後はさらに質に関する新たな内容や、
変更が追加されていくことが考えられます。
 
まずは前提として保育の質を念頭に置き、
各内容に対応していくということが重要です。
 
②人的資本経営の重要性
今回のセミナーでは経営情報の見える化の各項目について
その内容とポイント、注意点を解説させていただきましたが、
中でも特に人的資本に関する事項について
時間をかけて説明をさせていただきました。
 
人的資本とは業界的にはなかなか聞き馴染みのない言葉のように感じますが、
上場企業などではすでに開示義務があり、近年、注目されている言葉です。
 
経営情報の見える化の中では
人的資本に関する内容は報告が任意となっており、
報告をした場合は公表されるということになっていますが、
GCLIPとしては、ぜひ報告をすることをお勧めする箇所です。
 
なぜならば、一つは人的資本という考え方そのものが
今後の経営にも重要な要素になるということ、
そしてもう一つは他の項目と比較し、
自由記述の箇所が多く、オリジナリティを出すことができる
という箇所であるためです。
 
人的資本とは文字通り
人を「資本」として捉えるということです。
 
よく「人を大切にすること」と同じであると
勘違いされるケースがありますので、
人的資本経営と人を大切にする経営という
二つの経営の方向性の違いを確認することで、
人的資本経営のイメージが湧くのではないかと思います。
 
以下をご覧ください。
 
 
特に[人材が持つスキルや能力の捉え方]と
「マインドの持ち方」という二つの箇所を確認すると、
その違いが良くわかるのではないかと思います。
 
人を大切にする経営では、
人材を会社の持ち物として捉え、
個人の能力を「意図に沿って」成長させる
という方向性であることに対して、
 
人的資本経営では、
人材のスキルや能力は個人の持ち物として捉え、
「個人の意思に沿って」成長する個人の能力を借りる
という発想になります。
 
なぜこのような考え方が重要になるのかというと、
これからの人手不足時代において、
採用やマネジメントを考えた場合に
人的資本経営を意識した経営を行わなければ
人手不足の影響を大きく受けてしまう可能性があるためです。
 
日本は2030年には340万人、2040年には1000万人の
人手不足になるという予測が出ています。
 
このような時代に中で、
・個人が尊重されない
・自分が活躍できそうにない
・自分がイメージする成長に繋がらない
という法人と
 
・個人が尊重される
・自分の能力が役立ち、活躍が出来る可能性がある
・自分がイメージする成長に近づける
という法人ではどちらに就職をしたいと感じるでしょうか?
 
おそらく後者ではないでしょうか?
 
人的資本経営はまさしく後者を進めていく経営であり、
今後ますます重要な考え方になっていきます。
 
経営情報の見える化において、
急に人的資本という言葉が登場したのは、
国としても人的資本を意識した経営を
各園に行ってほしいという意図があるのではないかと思われます。
 
人的資本に関する内容の報告は任意となっていますが、
ぜひ積極的に記載をしていただければと思います。
 
記載のポイントとしては、
現在行っていることはもちろんですが、
法人として目指す将来の姿を記載する
ということも大きなポイントです。
 
ぜひ未来へのメッセージをご記載ください。
 
③賃金テーブルと評価制度の構築
賃金テーブルと評価制度の構築は、今後重要になると予想されます。
その理由は以下です。
 
・処遇改善等加算においてキャリアパス要件が要件化
組織規模の拡大と近年の若者の特徴を捉えるとフィードバックの機会が重要であるため
・採用の競合に一般企業が含まれるため
・人的資本経営を進めていくため
 
処遇改善等加算の一本化によって、
キャリアパス要件が要件化されました。
 
そのため賃金テーブルや評価制度の重要性が増していますが、
近年の組織マネジメントを考えると、
更に重要度が増しているように思います。
 
共働きの増加や入園の低年齢化によって
人員配置が増加している傾向があります。
組織規模が大きくなることによって
コミュニケーションを取る機会が減少し、
マネジメントが難しくなっています。
 
また、近年の若者の特徴を踏まえると、
【寄り添い】や【フィードバック】がキーワードとなり、
定期的にフィードバックができる仕組みを作ることはとても重要です。
 
さらに業界を問わず人手不足に陥っていますので、
求職者からは評価制度や賃金テーブルがすでに構築されている
一般企業との比較も行われていきます。
 
人的資本経営という視点で言えば、
個人を尊重していく中でも、組織である
ということを忘れてはなりません。
だからこそ組織の考え方が明確化されていることはとても大切です
 
このような中で評価制度の構築は
法人の考え方を浸透させ、
良い行動、悪い行動などをできる限り明確化させ、
組織内で共有していくために重要なテーマです。
 
また、評価制度と連動した賃金テーブルは
個人の成長意欲を高めることにも繋がり、
人的資本経営を進めていく上で重要です。
 
制度的な変更によって賃金テーブルや評価制度が求められているということもありますが、
それだけではなく、今後の組織マネジメントを考えても
重要な内容になってきていますので、
ぜひ構築に向けて動き出していただければと思います。
 
セミナーの一部をご紹介させていただきましたが、
制度的な変更はあくまでも保育の質にこだわった変更が行われており、
これからもその流れはさらに進んでいくと考えられます。